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岩手・花巻で講演をした日がある。終了後の酒席でのこと。県庁OBという老紳士より、「県から生まれた歴代総理の名は?」と問われた。ヒントは「4人プラスα」。原敬、米内光政、鈴木善幸……αは小沢一郎のことかと思って口にしたが、あとが思いつかない。

 正解は斉藤実、さらにαとして東條英機。東條は東京生まれであるが、家系は盛岡藩にあり、プラスαに数えるのだそうだ。

総理の数は他府県に比べてもダントツである。なぜ多数の大物政治家が生まれたのか。そこに「東北という地の宿命」を説明されて首肯するものがあった。

 東北史をひもとくと、対中央との戦争において勝ち戦はない。京や鎌倉が中央であった時代、征夷大将軍という言葉に象徴されるように、奥州は常に「征伐」されるべき地だった。戊辰の役においては奥羽列藩同盟を結成して薩長に対抗するが、「朝敵」として敗れる。維新以降は、その汚名をそそぐためにも大物政治家の出現を必要としたというのである。

 いま東北各地が被っている惨禍を伝え聞くと、ふと酒席でのよもやま話を想起した次第である。

 夜、ラジオの報道番組で「被災地のいま」を聴く。被災者たちの東北弁が耳に残る。愛する家族を失ったという老婦人、いまだ家族の遺体が見つからぬという中年男性、見つかっただけ幸いという高校生、家も仕事場もすべてを失ったという漁師……。悲嘆のどん底にあってなお、とつとつと静かに語る人々がほとんどである。それゆえ、

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筆者

後藤正治

後藤正治(ごとう・まさはる) 後藤正治(ノンフィクション作家)

ノンフィクション作家。1946年京都市生まれ。京大卒。医療、スポーツなどをテーマに執筆活動を続けている。著書に『遠いリング』(講談社ノンフィクション賞)、『リターンマッチ』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『スカウト』、『清冽――詩人茨木のり子の肖像』ほか。

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