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通信と放送の融合は進むも革命は起こらず

川本裕司

川本裕司 朝日新聞社会部記者

日枝久フジテレビ会長が異例の長いあいさつをしたのは、2009年1月のこぢんまりとしたパーティーの冒頭だった。

 「2000年、01年からニッポン放送の買収の危機を言っていたが、うまくいかなかった。06年の株主総会ではファンドに食われるだろうと、05年1月にTOB(株式公開買い付け)をかけた。ライブドアの保有するニッポン放送株が50パーセントを超えたときは『これまでか』と思ったことがあった。北尾(吉孝SBIホールディングスCEO)さんがホワイトナイトになって流れが変わり、休戦ではなく和解となった。テレビ、新聞の崩壊といわれるが、テレビも新聞も絶対に崩壊しない。ただテレビとしては、今回の危機はどのように仕組みをつくりかえるかというチャンスと考えた方がいい」

 ライブドアの上場廃止による第三者割り当てで引き受けた株式の急落による損害賠償をフジテレビが求めた訴訟で、約310億円の支払いで和解してから8日後のパーティーだった。乾杯のグラスを手にしたまま、高揚した口調で話は約20分間に及んだ。

 05年2月、堀江貴文氏が社長をつとめていたライブドアが時間外取引でニッポン放送株の35%電撃取得した。これから2カ月余り、ニッポン放送の経営権をめぐるライブドアとフジテレビの争奪戦は世間の耳目を集めた。強い影響力を誇る既存メディアの代表格であるテレビの民放首位局を、設立から9年しか経たない新興IT企業が実質的に手中に入れようという前例のない試み。歯にきぬ着せぬ堀江氏の発言と相まって、連日トップニュースとなった。

 堀江氏は05年10月、東京・築地の朝日新聞で講演したことがある。そこで本音を語った。

 「民放の魅力はリーチ。テレビ局なら1局で月に1回でも見たことがある指標であるリーチが5000万人になる。ニッポン放送買収も、多数のリーチを得られることが大きな魅力だった」

 「インターネット時代になってオンデマンドになった。好きな時間に好きなニュースを検索して見ることができるようになった。……マスメディア的なアプローチで攻めていると、インターネット時代の本質を見誤るんじゃないか。編集することが大事なんじゃなくて、全部を提供して、人々に探しやすくさせることが大事」

 ニッポン放送買収の戦略として堀江氏が語ったのが「放送と通信の融合」だった。技術的にできるのにテレビ側は「融合」に積極的に取り組んでこなかったとして、堀江氏自らが改革の旗を振ろうとしたようにも映った。 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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