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ネットは「救えるエリア」を広げるツールだ

西田宗千佳

西田宗千佳 西田宗千佳(フリージャーナリスト)

東日本大震災で、ネットは人々を救ったのか? 筆者の答えは「イエス」だが、いささかの逡巡もなく答えられるものでもない。

 1995年の阪神淡路大震災と今回の違いが、携帯電話やインターネットの普及であるのは間違いない。ネットインフラと携帯電話が普及し、通信とコミュニケーションのあり方が変化したこと。それが15年間に起きたことだった。

 だが、それらの普及で多くの人々の命が助かった、と言い切るのはあまりに傲慢だ。

 被災直後にネットが使えたのは、都心を含めた、直接の被災地ではない場所だ。被災地は、携帯電話が利用できるようになるまでですら、ある程度の時間がかかった。またそもそも、ネット上にはデマも蔓延し、買い控えや復旧作業の遅延の原因ともなった。冷笑的な言い方をすれば、ネット「だけ」で命は救えない。

 だがそれでも、ネットの普及は、災害の不安から人々を救う助けになっていた、と思える。

 震災当日、東京近郊の帰宅難民を救ったのは、帰宅難民同士で交換される、リアルタイムの交通情報だった。暗い道を歩く人々にとって、それがどれだけの支えであったことか。

 小さな町や交通が不便な地域には、報道関係者がなかなか入ってこないこともあり、当初、災害情報が外に伝わりにくい状況があった。そういう地域でも、通信回線が復旧しはじめるに従い、被災地内部から直接声が伝わり、復旧の一助となった。

 一部地域では、地デジ対応を地域のケーブルテレビ網が担っており、その設備が被災した結果、テレビも電気もあるのにテレビ番組から情報を得られない、という事例もあったという。そこでは、テレビ・ラジオのネット経由による再配信が、大きな役割を果たしたという。

 確かに、通信が人を助けられる範囲は、限られているのかもしれない。

 だが、

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