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TBSを待ち受ける前門の虎と後門の狼

川本裕司

川本裕司 朝日新聞社会部記者

「ドラマのTBS、報道のTBSといわれてきたが、ここ数年は大変だった。すばらしい栄光、伝統を脱ぎ捨て、裸の挑戦者として果敢に取り組んでいく」

 TBSテレビの難波一弘編成制作局長は、4月改編を発表した2月23日の記者会見でこう言い切った。視聴率は民放4位に転落、昨年9月決算(連結)ではキー局で唯一の赤字という土俵際に追い込まれ、過去の名声をあえて断ち切る宣言だった。

 勝負をかけた改編を前にした3月11日、東日本大震災が起きる。大事件のときに、どのチャンネルに合わせるかは日ごろの報道への信頼にかかわっている。

 この日で視聴率で断然トップだったのは、災害報道で定評のあるNHK。続いてフジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京の順だった。3日間CMなしの特別報道態勢でもこの順位は変わらなかった。

 番組も首をひねる内容だった。発生当日、各局は大きな揺れ、迫りくる津波、次々と起きる火災……と、未曽有の大震災の生々しい現地の映像を優先して伝えた。ところが、TBSは夜になると、男性キャスターと識者のやり取りをする討論番組のような東京のスタジオが長々と画面を占めていた。

 東北に拠点がないテレビ東京は共同通信の映像などをつなぐ苦労の様子を見せたが、老舗の地方局を系列にもつTBSはその実力を発揮できる立場にいたはずだった。TBSのある幹部は「映像がなかったわけではない。なぜ、ああなったのか理解できない」。局内から批判殺到を受け、報道局は震災報道の検証を迫られたという。

 「報道のTBS」が過去の遺産になったかのような震災報道に比べ、ドラマでは明るい兆しもある。

 昨年終わりには、その日の最高視聴率番組が平日午後4時台の「水戸黄門」の再放送という信じがたい事態がときどき起こっていた。しかし、医師が幕末にタイムスリップする奇抜な想定ながら強いメッセージ性が好評だったドラマ「JIN-仁-」の完結編初回(4月17日)が23.7パーセント(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の4月クールの連続ドラマで最高の視聴率を記録し、社内は久々の明るさに包まれた。4月改編では、ゴールデンタイムの視聴率が5月8日までの平均が4位ながらテレビ朝日に0.1パーセント差とわざかながら回復基調を見せつつある。

 ただ、5月12日に発表された10年度決算では、TBSテレビが民放キー局(単体)で唯一の赤字(18億円の純損失)を記録した。視聴率の低迷に伴う売り上げの減少という営業面の打撃は、社員の処遇に影を落とそうとしている。

 10年10月、財津敬三TBSホールディングス社長(現副会長)が社員集会で「ホールディングスとテレビの人事制度、給与体系を共通のものにすべきであり、制度、体系をまとめて組合に提案したい」と述べた。この発言は、社内で大きな反響を呼んだ。財津社長は「テレビがグループ全体を引っ張り支える役割を果たすことでTBSグループの一層の活性化を図っていきたい」と狙いを述べたが、TBS内部に抱える社内の複雑な給与体系の一本化構想が、新たな紛争の種になりかねない側面もあるからだ。

 TBS(東京放送)は00~01年、番組制作部門をエンタテインメント、スポーツ、ライブ、ラジオの4社に分社化された。ラジオを除く3社が04年10月にTBSテレビとして統合された際、成果主義の給与体系が導入されるとともに、04年以降にTBSテレビに入社した新入社員や中途採用組は大幅に引き下げられた給与水準が適用された。

 TBS関係者によると、TBSテレビの賃金体系は元々のTBSの7割になっており、

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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