小関悠
2011年05月26日
もっとも、iPadがアップルの思い通りに利用されているかというとそうとも言いがたい。振り返れば、初代iPadの発表会では電子書籍サービスiBookや、New York Timesなどの電子新聞について多くの時間が割かれていた。アップルはいまやハードウェアだけの企業ではない。さまざまなアプリを販売し、音楽データや書籍データといったデジタルコンテンツを仲介する、巨大コンテンツ企業でもある。iPodでは音楽ストアiTunesと連携することで、デバイスとコンテンツを強固に結びつけ、音楽業界を一変させるほどの成功を成し遂げた。これと同様に、アップルが大画面のiPadを発売した狙いは、電子書籍や電子新聞、電子雑誌といった収益性の高いデジタルコンテンツの販売を促進することにあったはずだ。
ところが、こうしたiPad向けデジタルコンテンツは、今のところ大きな成果を挙げられていない。一早くiPad版を売り込んだ雑誌WIREDは、当初こそ10万部以上を売り上げて話題になったものの、昨年末には早くも2万部近くまで落ち込んでいるという。今年2月に鳴り物入りで発表された、Wall Street Journalが手がけるiPad専用新聞The Dailyも、今のところ苦戦が続いている状況だ。もちろんゲームなど単価の低いアプリはiPadにおいても人気だ。しかしiPadがそれだけの存在で終わってしまっては、アップルとしては不満が残るだろう。
こうした問題を抱えるのはアップルだけではない。iPadに負けじと、各社さまざまなタブレット端末を発表しているが、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください