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大相撲技量審査場所、見たい人は見た事実から始めたい

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

数々の経緯を経て、大相撲技量審査場所が22日に無事終わった。両国国技館に行く時間もとれず、休日の書き物を含めて終日仕事をしながら協会の公式配信動画を見て15日間感じた一好角家の素朴な感想として、画面から感じられる雰囲気は、これまでの本場所と、よい意味で何も変わらなかった。報道されているように、懸賞がないなどの簡素で締まった雰囲気は好感の持てるものであり、若干困ったことは、リプレイ映像がないこと(これは本場所で観戦していれば当然のこと)、スポーツニュース以外にダイジェスト映像を深夜に見ることができないこと、天皇賜盃拝戴は「外部表彰だから」今回はなしという事実誤認(天皇または宮内庁が表彰したことは一度もない)が協会からも報道からも発せられていたこと、くらいだっただろうか。

 もちろん、昨年の野球賭博問題以来の経緯から、普通のように見える場所として開催するために投じられた関係者のエネルギーは壮絶なものであったし、二度と相撲を見ることのない大量の人たちが離れていったのだろう。両国国技館にも、無料開催だからやってきた来場者も多いだろう。そして観客も含めて「国技から八百長は根絶したか、大相撲は社会から退出すべきか、みそぎは済んだか」について結論の出ない議論を続ける人は今後も多いだろう。

 それらたくさんの論点については、すでに筆者からWEBRONZAの複数の寄稿において一定の見解を示しており、ここでは個々の説明を省略する。すべてを要約すると、江戸時代の相撲会所以来のよしあしの伝統や様式美は維持され、その伝統の範囲で賭博罪でない八百長は一部で今後も続く中、それでも超人的な肉体を作り上げた力士が見せる勝負事はエンターテイメントとしてそれなりに魅力的であり、これを従来価格の半分以下なら場内観戦する人、有料放送やネット動画配信では十分な規模だけ視聴する人、がマーケティングターゲットとして残り、力士や親方はリッチな職業ではなくなるが、パトロンを上手に見つけ、民間の興行団体として柔軟に残っていくだろう。

 それらの是非よりも、まずはニコニコ動画の無料リアルタイム配信において15日間でのべ160万人の視聴者数を獲得したこと、無料とはいえわざわざ平日昼間の両国国技館に足を運ぶ人が連日6,000~7,000人規模を数えたこと、を事実として重視したい。これだけブランドイメージの失墜した大相撲を見たい人、見た人は、いまだ日本のプロスポーツの何番目かの規模で存在しているのだから、それに応じた課金・広告のビジネスは可能であること、そこからポジティブに改善策や将来を考える余地は十分にあること、から議論をはじめることが、日本経済および社会にとって、より生産的な取り組み方であろう。

 放映については、もう大相撲は有料放送(WOWOWやJ-Sports等)でお金を払って見る時代であろう。大相撲は、ネット配信、ダイジェスト番組も含めて、多チャンネルコンテンツの1つとして妥当な社会的地位にあると思う。この点、NHKは放映こそしなかったが、元職を含めてアナウンサーを協会公式映像配信の実況者として派遣し、保管資料として放映されない実況中継をし、場内での優勝インタビューまで行っている。影の協力者であったことはもっと社会にアピールしてよかったが、

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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