メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

羽生世代がもたらした、速さと若さの時代

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

8日、将棋の名人戦において羽生善治名人(王座・棋聖の三冠)が挑戦者森内俊之九段を下して3勝3敗のタイに持ち込み、名人位の帰趨は最終第7局に持ち越された。2人は1970年生まれ、ともに名人位を5期以上獲得した「永世名人」の有資格者である。佐藤康光九段、丸山忠久九段、藤井猛九段、郷田真隆九段、深浦康市九段といった七大タイトル(名人、竜王、王将、王座、王位、棋聖、棋王)経験者も含めて、10代から将棋界で活躍し、「羽生世代」と総称された彼らも、すでに40代に突入した。

 これだけの強豪が集中して特定の年代に出現するということは、過去の将棋界にはおそらくなかった。とりわけ19歳で初タイトル(竜王)を奪取し七大タイトル独占も実現した羽生の半生は1990年代にマスコミにも広く取り上げられ、年寄りくさい将棋の世界に吹いた新風を世に知らせることとなった。

 こと将棋について言えば、歴代の第一人者たちも名人位に届いたのは30歳前後であり、10歳ほど上の谷川浩司九段が21歳で史上最年少名人位を獲得(今も記録)したことも、すっかりかすんでしまうほど、羽生を中心とする羽生世代の活躍はすさまじかった。そして立派な(?)中年世代となった今もタイトル争いの中心にあることは偉業というしかない。しかし、すでに七大タイトルのうち四冠(2011年5月現在、渡辺明竜王(1984年生まれ)、広瀬章人王位(1987年生まれ)、久保利明王将・棋王(1975年生まれ))は、羽生世代より下の年齢の棋士たちによって占められており、今また糸谷哲郎五段、豊島将之六段、村田顕弘四段、稲葉陽五段の「関西若手四天王」、いずれも羽生世代の活躍を見て将棋を始めたであろう1986~90年生まれの棋士たち、がタイトル争いに肉薄してきている。

 羽生世代がマスコミに取り上げられていた頃の、おそらく1995年頃のNHKスペシャルだったと記憶しているが、羽生世代の活躍について佐藤九段が、以下のような趣旨のことを述べていたことが強く印象に残る。いわく「同世代の切磋琢磨もあるが、パソコンその他の分析が昔よりもすごく進歩して、過去の対戦の研究のレベルが高くなり、それが自分たちの力を高めている。ずっと昔の棋譜(対戦記録)を見ていると、ずいぶんのんびりした将棋を指していると感じる。自分たちの将棋はもっと厳しく、もっとスピードがあり、もっと強い」。

 数年前にはコンピューターの最強将棋ソフトを相手に渡辺竜王が辛勝を続け、関西若手四天王たちはインターネット将棋により棋力強化に多少なりとも影響を受けている模様である。

 また羽生が七冠を達成したときの報道で「七冠は、 ・・・ログインして読む
(残り:約698文字/本文:約1804文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

倉沢鉄也の記事

もっと見る