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お一人様暮らし時代へ

後藤正治

後藤正治 後藤正治(ノンフィクション作家)

先頃、総務省より2010年国勢調査の「1%抽出速報」が発表された。少子高齢化がより進行していることがわかる。総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は23・1%で、欧米諸国を上回り世界最高水準となっている。日本社会が屈指の長寿国ということでもある。

 注目されるのは家族類型別割合だ。いまやトップは一人暮らしで、31・2%を占めている。この割合、1995年は25・6%だった。15年前は4家族に1家族が一人暮らしであったのが、いまや3家族に1家族がそうなりつつある。

 高齢化社会の趨勢であるが、男女とも未婚率が増え、ライフスタイルの変化もかかわりある。定年まで仕事をもつ女性たちもいまや普通となった。時代は「お一人様暮らし」の時代へと突き進んでいる。

 ともに暮らす家族があり、近所があり、村や町があり、その先に国があり……という日本社会の〈幻想体系〉が崩れ去ろうとしていることを改めて感じる。

 高齢者の一人暮らしといえば「孤独死」を連想する。誰にも知られることなく、看取られることもなくあの世へと旅立つ。なんともいたましく、やりきれない。この比率は男性が高い。

 よくいわれるのは、女性は地域の付き合いがあり、いろんなサークルにもかかわっている。男は会社を卒業すると孤立した不器用な個人へと戻っていく。一人暮らしへの準備やノウハウが乏しいのだ。

 以下は同世代の女性知人から耳にした現代のこぼれ話。

 ――彼女には80代後半の父がいた。長年連れ添った夫人が亡くなり、一人暮らしとなったが、どうにも寂しくて仕方ない。“結婚相談所”で60代の女性を紹介され、籍を入れて暮らしはじめた。結婚期間は短く、間もなく父は亡くなり、遺産はそっくり新夫人のもとへと移行した。これって高齢化時代の新ビジネスではないか――とおおいにこぼされたのであった。

 遅い結婚が“別れ後”を見込んだものであったのかどうかは不明であるが、

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