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全英ゴルフ、自称「最後の優勝」を称える

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

筆者はかつて、5月下旬から7月下旬にかけて、毎年寝不足の日々を続けていた。それは自分の好きなヨーロッパのスポーツイベントが目白押しで、これをヨーロッパ時間の生中継で見ようとしていたからだ。2011年に至り、そのほとんどは有料放送に移行し、結果もネットで詳細に把握できるようになった今、地上波テレビで以前と変わらず充実した内容を見られるのは、17日に終了した全英オープンゴルフくらいになってしまった。

 個人的にはゴルフはほとんど未経験で、観戦者としてもジャーナリストとして論じるほどの知見もない。ただ、数あるゴルフトーナメントの中でこの全英オープンゴルフは、世界最古のスポーツ大会ゆえの名称である「The Open Championship(英国ともゴルフとも名乗らない『選手権大』」)」の伝統的運営を随所に見せ、ゴルフ発祥の姿を想像させる海岸沿いの荒地の風景の中、世界のトッププロがパープレイにすら苦しみ、ときに素人のようなミスを犯す姿を見ると、自然対人間のゲームとしての究極の姿、聖なる姿を感じさせてくれる、という理由で、長らく見続けている。ゴルフの専門家の方からは、これが最高峰の大会と呼ぶべきかの異論もあろうが、それはおそらくテニス界における全英オープン(ウインブルドン)の位置づけと同じで、特殊な条件下での偏った技術を持つ選手が勝ちやすく、ワールドツアーでの真の実力世界一決定戦とは言いきれないが、しかし聖地であるがゆえにここの優勝が4大大会の中でもっとも聖なる価値を持つ、ここで勝たねば真の世界一と呼ばれない、というのと同じなのだろうと推測している。

 今年の全英オープンゴルフは、筆者と同世代の古豪、「連合王国(United Kingdom)」に属する小国、北アイルランドのD.クラーク選手が制した。長らくの強豪だが4大大会のタイトルはなく、10歳年下のG.マクドウェル選手(2010年全米オープン優勝、7月11日現在世界ランキング9位)、20歳年下のR.マキロイ選手(2011年全米オープン優勝、同4位)といった同郷の若手に遅れをとりつつ、彼らが尊敬し追いかけてきた大先輩が、一世一代で狙って獲った、初の栄冠である。

 ゴルフは他のスポーツよりも高齢で第一線の活躍が可能な競技ではあり、今大会も61歳の元世界ナンバーワン、T.ワトソン選手の活躍も見られた。しかし

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