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なでしこ優勝で改めて考えること

潮智史

潮智史 朝日新聞編集委員

女子サッカーの世界はいつも悲壮なほどの危機感と隣り合わせにある。外から見ていると、常にそんな印象を受けてきた。

 W杯や五輪で手を抜くことなく、必死になってがんばる。それは、勝つことで注目を集め、注目を集まることで選手を取り巻く環境や待遇を改善しようという思いを誰もが持っているからだ。だから、なでしこジャパンはどんなに苦しい試合でも最後まであきらめない。代表選手でも仕事やアルバイトをしながらという環境が当たり前にある。それを受け入れてしまっているから、彼女たちはそれを言い訳にもしない。

 困難な状況だからこその工夫というのか、女子サッカーでは強化の仕方も、どこかマイナスをプラスに変えてしまうような部分がある。逆説的ではあるが、長所は短所の裏返しだ。

 たとえば、小学生の間は女子が男子に混ざってプレーするのが一般的だ。ところが、中学に上がると、男女の選手登録が分けられるため、サッカーを続けるなら女子のチームを探さなければならない。男子なら当たり前にある中学の部活動としてプレーを続ける環境がないのだ。W杯で優勝した代表選手たちも同じような境遇をたどってきた。同時に、小学生の時期に男子を一緒にプレーする環境が女子のレベルアップに好影響を与えているという指摘は多い。小学生時代は、細かい技術を身につけるために重要な神経系が発達する時期。男子とプレーすることで技術的にも体力的にも力をつけるという。

 今回のW杯代表選手には、安藤、永里、鮫島ら欧米でプレーする選手が存在する。彼女たちは日本サッカー協会が支援策と打ち出した「海外強化指定選手」という制度を使っている。レベルの高い米国、ドイツなどに出ていくことは個人の力を伸ばすには絶好のプレー環境だ。ただ、日常生活を含めた生活環境を考えれば負担は大きい。そこで移籍時に支度金

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筆者

潮智史

潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員

朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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