川本裕司
2011年07月22日
こうした地道な人海戦術が功を奏してか、24日に迫った地上波テレビのデジタル完全移行に対応していない世帯は、6月末で29万世帯(総務省調べ)に減った。21日に記者会見した広瀬道貞・民放連会長は「7月に入ってからの(アナログテレビでの)カウントダウンスーパーや広報が行き届き、電話相談が大変多い。29万世帯の3分の2は減って、残り3分の1というのが私の推測だ」と述べた。
10年前から国策として始まった地デジ移行は、各世帯に薄型テレビ買い替えやUHFアンテナ設置、チューナー配備といった支出を強いた。内需喚起の産業政策の意味合いもあった地デジだが、一時は1インチ1万円といわれた薄型テレビの価格が1インチ1千円までに下落。値下げ競争に陥った家電メーカーは、海外での生産に傾斜している東芝を除くとテレビ部門が赤字になっている、といわれる。放送局は民放が1兆600億円、NHKが4200億円を中継局や機器に投資した。利益を得ているのは家電量販店だけと指摘されるのは、地デジの一側面である。
英国のように地方ごとに時間差をつけるのではなく、日本は全国一斉の地デジ化の方針を打ち出した。しかし、東日本大震災で被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県だけ来年3月末まで延期されることが、7月13日の総務相の諮問機関である電波監理審議会で決まった。理由として「辺地共聴施設の改修や新たな難視地区の対応など国としての受信者対策は年内に完了の見込みであり、東北3県の住民のデジタル化対応をできるだけ丁寧にサポートすべきであること」を挙げている。
震災直後、被災地からは「役場が流され、生活をどうするかが第一で、地デジどころではない」と、「最低1年の延期」を求める声があがった。
これに対し、地元の民放局は1年間延期すると送信費などで3県の12局合計で4億円かかり、アナログ送信機器の部品不足に不安もあるとして、「延期は長くても今年12月末まで」と短縮を求める意見が強く出された。「5月の連休明けから状況も変わってきた」という声もあった。今年4~6月の第1四半期の民放の売上高は、「50%台」(福島)、「60~70%」(岩手)、「75%程度」(宮城)。3県の広告出稿の減少に直撃されたことによる経営面の厳しさが、アナログ延期に慎重な姿勢をより強めた。
被災地の仮設住宅には、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、炊飯器、電子レンジ、電気ポットの生活家電6点セットのうち必要なものが備えられている。テレビはデジタル対応となっている。
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