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昨年から「地方の時代・映像祭」の番組審査員をつとめさせてもらっている。過去1年、全国のテレビ局で制作されたドキュメンタリー番組のなかから秀作を選ぶのが役割である。まずは第一次選考として20数本を観た。夏の盛り、なかなかの難行であるが、得るところ大であった。

 過疎、限界集落、介護と看取り……「日本列島のいま」がひしひしと伝わってくる。強い印象を残したものに、たとえば以下のような作品がある。

 NHK大阪放送局制作の「鯨の町に生きる」。和歌山・太地町は鯨の町として知られるが、近年その存続が揺らいでいる。反捕鯨団体が町に乗り込み、その“残虐性”をネットで大仰に伝えていく。憤懣やるかたない漁師たちであるが、自分たちが鯨を食用とする文化と生業を改めて問い直していく――。

 テレビ長崎制作の「きららちゃんの島」。長崎・平戸の小さな島で暮らす漁師一家の日々が、美しい景色のなかに淡々と描かれている。きららは小学1年生。学校への送り迎えは漁船。元気で可愛い孫娘を見詰める祖母はいまも海女として海に潜る。三世代にまたがる家族のしっかりとした結びつきがその笑顔に表われている――。

 プロダクション制作の「北海道・豆と開拓者たちの物語」。四季の移ろいのなか、紋別と十勝の農家の暮らしを紹介しつつ、豆にかかわる北海道開拓の歴史を追っていく。道内には在来種の豆が数百種類もある。往時、開拓民たちは故郷の豆を袋に詰めて津軽海峡を渡った。近年の大規模農業のなかで消えていった豆もあるが、多くはいまもしっかりと北海道の大地に根付いている――。

 恒常的不況、雇用不安、少子高齢化……日本を覆う難題に、地方はより深刻に直面している。それでも、どっこい元気にやってるぜ、というのが、総じて地方からのメッセージだった。地方は別段、大都市に〝救済″されるべき対象ではない。いろいろと困難はあれ、東京の上っ面の賑わいとは異なり、地に足のついた暮らしの確かさが伝わってくる。

 加えていえば、農業・林業・漁業の第一次産業が大切さである。GDPなどに表われる数字ではなく、第一次産業があってはじめて、この国土はしっかりと支えられているという獏とした信頼感である。農・林・水が滅びるとき、国土は荒廃の極みへ陥るだろうと思う。

 必要なのは、

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筆者

後藤正治

後藤正治(ごとう・まさはる) 後藤正治(ノンフィクション作家)

ノンフィクション作家。1946年京都市生まれ。京大卒。医療、スポーツなどをテーマに執筆活動を続けている。著書に『遠いリング』(講談社ノンフィクション賞)、『リターンマッチ』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『スカウト』、『清冽――詩人茨木のり子の肖像』ほか。

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