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教育への「シバキ」は何に駆られどこに向かうのか

本田由紀

本田由紀 本田由紀(東大教授)

「大阪維新の会」が8月22日に公表した「大阪府教育基本条例(素案)」は、知事および府議会を頂点とし、その下に教育委員会、校長・副校長、教職員さらには保護者および周辺地域住民が順に位置づくという形の集権的コントロールシステムをその特徴としている。それは、具体的には以下の事項に見ることができる。

 知事は教育委員の任命・罷免の権限をもち、知事の設定した目標を実現するための具体策を教育委員会が示すとされている。教育委員会は知事が設定した目標に照らして校長・副校長の人事評価を行い、その結果を任免に反映させる。校長は教職員の人事評価を5段階で行い、各段階の分布も厳密に定められている(「S」5%、「A」20%、「B」60%、「C」10%、「D」5%)。教員の懲戒処分・分限処分については詳細な別表が提示されており、懲戒処分を行った場合には当該教員の氏名・年齢・職階・処分内容がHPおよび報道機関への資料提供等により公表される(素案全体の中で「第6章 懲戒・分限処分に関する運用」が際立って大きな比重を占めている)。学校には必ず、保護者や周辺地域住民を含む学校運営協議会が設置されねばならない。そして保護者および周辺住民は「学校運営に主体的に参加し、より良い教育の実現に貢献するよう努めなければならない」、「教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」と定められている。

 このような強力な上意下達システムを教育に導入しようとする本条例案の背景にあるのは、公教育への人々の不満が90年代から増大してきていること、それに加えて大阪ではそれをいっそう強めるような教職員の不祥事が発生していること、そしてそれらに乗じる形で教育への管理統制を強化する方向性を明確に打ち出し、大阪都構想を念頭に置いた今秋の大阪府知事・大阪市長ダブル選挙において集票に役立てようとする意図である。6月に成立した君が代起立斉唱条例はこの素案への布石であった。むろん、必ずしもそうした具体的な文脈がなくとも、「独裁者」「極右ポピュリスト」とも呼ばれる

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