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「復興五輪」で東京は勝てるのか

稲垣康介

稲垣康介 稲垣康介(朝日新聞編集委員)

英国の老舗ブックメーカー(公認賭け屋)、ウィリアム・ヒルは、2020年夏季五輪の招致レースで東京を本命に挙げた。

 国際オリンピック委員会(IOC)が2日に立候補6都市を発表したのを受けてのオッズだ。私が確認した時点で、東京が3倍、ローマ(イタリア)、マドリード(スペイン)が3・22倍、イスタンブール(トルコ)が7倍、ドーハ(カタール)、バクー(アゼルバイジャン)が15倍だった。

 落選した前回、開催計画の中身は高い評価を受けたのが生きているのかもしれないが、正直意外だった。

 日本国内の関心はお世辞にも高いとはいえない。

 招致反対派、消極派の理由を分類すると、こんな感じか。「震災復興が優先」「石原慎太郎都知事が嫌い」「東京はすでに五輪を開いた」

 たしかに、震災復興は日本の最優先課題だ。でも、それを五輪招致と単純に結びつけるのはどうだろう。知事が嫌いだから、すべての施策に反対というのは極端な気がする。東京は1964年に五輪を開いているけれど、私を含め国民の多くは半世紀近く前の東京五輪には生まれていない世代だし、ロンドンは来夏、3度目の五輪を迎える。

 なでしこジャパンの世界一が日本列島を感動で包んだのを見てもわかるように、日本人はスポーツ好きで、歴代の高視聴率が示すように五輪にも熱狂してきた。9年後に仮に東京に五輪が来たら盛り上がると思う。ただ、今の時点で9年後の熱狂はイメージしにくいのが招致熱の低さにつながっている気がする。

 そうした「体温」の低さはスポーツに限らない。政治、経済への手詰まり感から日本全体が閉塞感に覆われ、諸外国の「日本パッシング(素通り)」が指摘される。スポーツ界では国立競技場をはじめ、1964年東京五輪の会場群は半世紀の時の流れで老朽化が進み、国際大会を誘致しようとしても規格にあわないケースも増えている。一方、同じ東アジアの中国、韓国は積極的だ。昨年のアジア大会は中国・広州、今夏の世界選手権は水泳が上海で、陸上は韓国・大邱が舞台だった。次の2014年アジア大会は韓国・仁川で開かれる。観光庁はスポーツツーリズムの旗を掲げ、大会を誘致することで観戦客を国内外から呼び込む経済の活性化策を提唱しているが、肝心の大会が開かれなければ効果がない。

 ただ、五輪招致に反対する意見のなかで、反論しにくい指摘もある。「今度も勝てないでしょ?」。今回、現時点で大本命はいないが、

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