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紳助騒動を機に芸能界“浄化”に乗り出す警察庁

西岡研介

西岡研介 フリーランスライター

「社会的影響力が大きい芸能界だからこそ、暴力団との関係遮断を実現しなければならない」――。島田紳助の引退騒動について9月1日、警察庁の安藤隆春長官は定例会見でこうコメントした。

 安藤長官といえば09年の就任以来、「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」と、“平成の頂上作戦”を推し進めてきた警察当局の指揮官だ。

 昨年、マスコミを賑わせた、警察当局による日本相撲協会の“浄化”作戦も、この“平成の頂上作戦”の延長線上にあったことは、10年6月25日付のWEBRONZAのコラム〈「角界と暴力団」報道の背後にある警察庁の思惑〉で指摘した通りだ。その指揮官の冒頭のコメントはまさしく、いまだにヤクザと切っても切れない関係にある芸能界に対する“宣戦布告”といっていい。つまり「角界の次は芸能界」というわけである。

 この安藤長官の号令一下、芸能界浄化作戦に動き始めた警察当局の最大のターゲットが、社団法人「日本音楽事業者協会」(尾木徹会長、以下「音事協」)だといわれている。経産省所管の公益法人である音事協は、105社の芸能プロダクションが加盟する日本最大の業界団体だが、警視庁は早くもこの音事協に対し、「暴力団排除に向けての具体的な取り組みを示せ」と、水面下でプレッシャーをかけ始めているという。

 さらに10月1日には、音事協が本部を置く東京都でも「暴力団排除条例」が施行される。この条例は7年前から、警察庁の後押しで、全国の自治体が制定・施行を進めてきたもので、その内容は各自治体によって様々だが、自治体によっては、暴力団と食事やゴルフなどの付き合いをした者を「密接交際者(関係者)」と見做す条例を定めているところもある。

 くしくも紳助騒動で、この条例が世間の注目を集めたことも、警察当局としては「してやったり」というところだろうが、この条例に引っかかってはたまらないと、“身に覚え”のある音事協加盟の一部の芸能プロは今、戦々恐々としている。

 一方、「角界の野球賭博問題に続いて、暴力団追放のまたとないチャンスが訪れた」という警察庁関係者はこう語る。

 「警察庁は『どんな微罪でもいいから紳助を立件しろ』と、大阪府警の尻を叩くと同時に、警視庁に対し『芸能界に“一罰百戒”を与えるような事件を挙げろ』と、ハッパをかけています。警視庁は既に、音事協の有力メンバーで、以前から複数の指定暴力団との関係が取り沙汰されている、大手芸能事務所の内偵を進めています」

 この当局の動きを敏感に察知した音事協関係者の間では今、「国民的行事」であるNHKの紅白歌合戦の開催まで危ぶむ声が出ているのだ。安藤・警察庁長官肝いりの、角界に次ぐ、芸能界“浄化”作戦の動きは今後も予断を許さないが、その一方で、今回の紳助騒動では、警察当局による度を過ぎたリークが目に余る。

 大阪府警捜査四課は、紳助が引退会見(8月23日)で「(極心連合会の橋本弘文会長に)手紙を送ったとか、一緒に写った写真があるとか、あるわけないですから」などと発言したことがよほど気に入らなかったのだろう。会見直後から〈2005年に東大阪市が本拠の山口組系暴力団の幹部宅などを家宅捜索した際、島田さんがこの暴力団関係者に宛てた手紙や、島田さんが一緒に撮影された写真が見つかった〉(8月25日付日経新聞)などという情報を複数のメディアに漏洩。新聞やテレビ、雑誌はこぞって〈紳助のウソ〉と報じた。

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筆者

西岡研介

西岡研介(にしおか・けんすけ) フリーランスライター

【2015年3月退任】フリーランスライター。1967年、大阪市生まれ。91年に神戸新聞社入社、阪神淡路大震災や神戸連続児童殺傷事件などを取材。98年以降、『噂の眞相』編集部、「週刊文春」記者、「週刊現代」記者を経て、現在はフリーランス。著書『マングローブ――テロリストに乗っとられたJR東日本の真実』で08年、講談社ノンフィクション賞を受賞。

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