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実はアナログ停波より重要かも知れない、10月のBSの多チャンネル化

速水健朗

速水健朗 速水健朗(フリーランスライター・編集者)

10月のBS放送の多チャンネル化(30chへの拡大)、有料放送化を大きなメディアの変化として捉えている向きは少ない。むしろ、先の地上波アナログ放送の停波の方が重大事件として捉えられていた。だが、そうではない。むしろ前者こそが大きな変化につながる重要事かもしれない。

 日本で「多チャンネル化」を巡るテレビ・メディアの変化の時期は、大きく2度あった。

 1度目は、BS放送が始まった1980年代末。85年の電電公社民営化後、通信の規制緩和・自由化の流れが「ニューメディア」という言葉を生み、衛星に限らず、ケーブルテレビ、有料放送のWOWOW、デジタルラジオのセントギガなど、多くの新しいサービスが登場した。

 2度目は96年。有料多チャンネルを売りとして登場したCS衛星放送のスカパー!が開局。映画やスポーツ中継の専門局が一気に登場し、本格的な多チャンネル時代の到来を訴えた。デジタル放送の始まりでもあり、当時はパソコンの普及期でもある。さまざまなメディアがデジタルで融合されるという期待がふくらみ「マルチメディア」という言葉がもてはやされた時期のことだ。

 これら2度の「多チャンネル化」は、既存のテレビ局の在り方を大きく揺るがすことはなかった。だが、アメリカではそうではない。70年代から80年代にかけて、ケーブルテレビが普及したアメリカでは、多チャンネル化、有料チャンネル化の流れが進んだ。このアメリカの「多チャンネル化」は、それまでテレビ局の在り方を大きく変える。

 かつてアメリカには連邦通信委員会によるテレビの公正原則が存在した。お茶の間と密接につながったメディアであるテレビは、公共メディアの色が濃く、政治的、道徳的に偏らない放送内容が求められていた。だが、多チャンネル化が進んだ70~80年代に、テレビがお茶の間のメディアではなく、個々の部屋で個別に観られるメディアへと変化。テレビが持つ公共性の意味は失われ、それに伴い公正原則は廃止。以後、テレビは自由化の道へと進むのだ。

 公平性原則の消滅は、FOXのような、共和党支持を明確に打ち出す政治的に偏向した放送局を生んだ。視聴者の支持を受けたFOXは急成長し、三大ネットワークはいまや四大ネットワークになっている。その一方で、テレビの自由化は、質の高いニュースを24時間流すニュース専門チャンネルのCNNも生んでいる。CNNは、米国内に限らず、世界的に視聴されるメディア企業である。

 「多チャンネル化」という変化、「公平性原則の廃止」は、アメリカのメディアの収入モデルを大きく変える。その変化をごく簡単に示すなら、国内に向けた広告収入モデルから、コンテンツを国内外いろいろなチャンネルを通して配信するコンテンツホルダー型への変化ということになる。CNNの登場・発展とは、こうしたメディア企業のビジネスモデルの変化を体現するものだった。

 先に、反フジテレビデモのニュースが話題を呼んだ。韓流ドラマに偏向するフジテレビへのメディア批判である。フジテレビは放送免許の独占事業者であり、 ・・・ログインして読む
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筆者

速水健朗

速水健朗(はやみず・けんろう) 速水健朗(フリーランスライター・編集者)

フリーランスライター・編集者。1973年生まれ。コンピュータ誌を経て、2001年よりフリーランスとして活動。主にメディア史、文化研究、企業・業界研究などのジャンルで取材・執筆活動を行う。TBSラジオ『文化系トークラジオLife』レギュラー出演中。著書に『タイアップの歌謡史』『自分探しが止まらない』『ケータイ小説的。~“再ヤンキー化”時代の少女たち~』。

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