メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

大山鳴動鼠ゼロ匹、的確な予測さえあれば……

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

震災以前から一般告知は事実上ないも同然で、10月1日からBS放送で新チャンネルが11チャンネル、来年3月からはさらに7チャンネルが、放送を開始する。7月24日に地上アナログ波の終了が静かなニュースとして終わりつつある中、BSアナログ放送波の同時終了はまったく認知されず、さらにその空き周波数帯に、デジタルBSの新チャンネルが出現することなど、一連の流れで理解している人は皆無に等しい。

 そもそもすでにスタートしているBS11、Twelvといった無料放送チャンネルすら認知度はきわめて低いが、今回の新規参入の放送チャンネルはほとんどが有料放送であり、電話やネットでの申し込まなければ真っ黒の画面に「契約が必要です」の表示が出るだけだ。チャンネル全体を一覧できる資料としては、http://www.soumu.go.jp/main_content/000085730.pdf が一番わかりやすいだろう。WOWOWがCMなど打っている、自身のチャンネル再編の告知は、この周波数再編の一環である。

 今回の参入事業者は、すでにスカパー!で有料放送を提供しているチャンネルであり、有料放送の支払い方法もスカパー!e2が窓口となる。既存のチャンネル視聴者(加入者)の目線では、BS機器だけでも見られるようになり、CS(スカパー!)チューナーから移行すればよいということになる。番組事業者側も、加入者に専用チューナーの負担を強いるよりもすでに手持ちの内蔵機器で見てもらえるなら、加入の障壁をひとつはずしたことになり、BS向け配信の設備コストに見合った加入者促進が望める、という考え方になっている。

 そもそも国際的に定義された放送専用衛星を使って強い電波で送信されるBSと、通信衛星の放送利用として弱い電波で送信されるCS(スカパー!)とが百万単位の加入者規模で並存するのは、世界でも日本くらいしかない。乱暴に表現すると、米国はBSだけ、欧州はCSだけだ。統一されていない放送技術の並存は、ユーザーに不要な経済的負担を強いてきた。

 ただし、このBS新チャンネルへスカパー!の有力チャンネルが進出したことは、そのままCSからBSへの移行を示しているわけでもない。CS側にはまだ大量のチャンネルがあり、BS側にはそれらが引っ越してくる周波数上の余地はない。そして人工衛星というものが10年程度で使用期限を迎え、地球に落下してくる設備である以上、一定の市場規模を持たなければ、100億円からの衛星打ち上げコストを支えることができない。現状では日本の衛星放送がBSに一本化するという流れにはなっておらず、当分CSの後継衛星も打ち上げられることになる。

 以上、供給側の事情を脈絡なく述べたが、そのことは視聴者にとって、そして日本経済にとって、何のインパクトももたらさない。見たい番組が無料と有料ですでに存在し、いま見ていたスカパー!のチューナーを使わなくても無料放送用にもともと持っているBSチューナーで見られるようになって少しだけ便利、というだけだ。しかも現在はCS110度放送(スカパー!e2)とBSの両方が内蔵されたテレビも、視聴ニーズを満たすだけの量が世に出ており、拙宅も含めてその多くは有料放送視聴には使われていない。

 「日本人が有料で映像配信を見る市場はどこまで有望か」の未来予測は、もう10年前に終わっている。WOWOW(300万弱)もスカパー!サービスの合計(400万弱)も、加入者数は頭打ちになって10年がたった。総量では増加を続けるケーブルテレビでも、多チャンネル放送サービスの加入者の比率はこの10年ほど

・・・ログインして読む
(残り:約884文字/本文:約2389文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

倉沢鉄也の記事

もっと見る