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ドーピング問題――禁止する薬物リストを作成して公開すべき

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 日本プロ野球組織(NPB)の医事委員会が、9月1日、中日ドラゴンズの井端弘和選手から禁止薬物を検出したと発表した。NPBは2007年から本格的なドーピング(doping:スポーツ選手が運動能力を高めるため、筋肉増強剤・興奮剤・覚せい剤・鎮静剤など薬物を使用する不正行為)検査を行っているが、井端選手は日本人選手として初の違反者になった。

拡大中日ドラコンズの井端弘和選手

 報道によると、2009年4月に球団はNPB医事委員会から井端選手の眼の疾患治療薬として使用許可を得たが、その有効期限が今年の5月30日であった。継続使用には再申請が必要であったにもかかわらず球団には再申請の認識がなく、井端選手も球団から説明がなかったために使用を継続していたという。かかる経緯を勘案し、NPBは井端選手に最も処分の軽い「譴責」を、球団には、その責任は重いとして300万円の制裁金を科した。

 井端選手の例でも分かるように、日本ではドーピングに馴染みが薄く、また無頓着な面があるが、ドーピングは以下2つの理由で、スポーツ選手及びスポーツ組織にとって極めて深刻な事柄だ。

・選手が現役時または引退後に肉体的障害を負う危険性が極めて高いこと。

・長年引き継がれてきた記録が歪められる可能性が高いこと。

 従って、今後ますます、ドーピング検査が厳しくなると共に、プロリーグの場合、球団の役割が重くなると予想される。

 現在、ドーピングに関して最も厳しい姿勢を取っているのは国際オリンピック委員会(IOC)だ。IOCでは1960年代頃から禁止薬物が問題視されるようになった。その背景には2つの事象が関係している。

 1つ目は、冷戦構造下での社会主義国が、スポーツの世界で資本主義国を凌駕するためにステート・アスリートを作り出したことだ。彼らはオリンピックで勝利を収めることを目的にサイボーグのごとき肉体を求められ、危険な薬物も供与された。その結果、彼らの体が蝕まれることになった。

 2つ目は、資本主義国でスポーツ・マーケティングの価値が高まり、薬物に手を出して勝利を求める選手を輩出するようになったことだ。メダルを獲得した選手はエンドースメント契約(選手の肖像権契約)を結べる機会が確実に向上し、多額の契約金が期待できるので、薬物の誘惑に負ける選手や取り巻きが後を絶たなくなったのだ。

 1974年にオリンピック憲章から「アマチュア」の文言が削除された後、本格的にオリンピックの商業化が促進され、商業化の骨格が完成の域に達した。そして1984年のロサンゼルス大会以降、オリンピックの裏側では禁止薬物を使用する側と検査する側の激しい戦いが繰り広がれることになり、現在に至っている。

 個人競技が多いオリンピックや国際陸上連盟の深刻さに比べると、米国メジャーリーグ(MLB)やNPBなどのプロスポーツリーグは

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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