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WBCは「不平等条約」か?――(2)利益分配率

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 前回はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の「知的財産権」を取り上げた。今回は、NPB(日本野球機構)と選手会(日本側)がMLBと選手会(米国側)に改善を要求している「利益分配率」について考える。

 「利益分配」では、米国の労使が採用する「団体労働協約」(労働協約)が参考になる。この制度は日本にないが、このシステムを最大限活用すれば、日米間の交渉妥結に活路を見いだせるかも知れない。しかも、労働協約の運用を熟知するMLB選手会が日本側の要求に理解を示してくれる可能性を秘めている。

1999年の第2回WBC決勝で韓国を破って優勝を決めた日本代表

 日米は、第1回大会開催(2006年)の前に、大会収益の66%を米国側が、13%を日本側が受け取ることに合意した。しかし、この分配比率に日本側は当初から不満だった。渋々応じた契約だったこともあり、第2回大会で大きな収益が出たために日本側の不満が増幅した。

 だが、米国側はこれまで日本側の13%の比率変更に妥協する姿勢を示していない。米国側の合意を得るのは容易でないと判断した日本側は、日本企業が日本代表を応援するスポンサー料が本大会の運営会社であるWBCIに直接流れていることに着目した。次回の第3回大会から、日本企業が支払うスポンサー料を日本側に還元するように米国側に要求したのだ。

 ところが、実情を確かめると、実際のスポンサー活動と日本側の権利主張との間に食い違いがあることが判明した。このことから、日本側の主張が通ったとしても、日本側が取得できる額は小さいであろうと指摘した。結局、原点に戻り、66%と13%の妥当性が争点になる可能性が高くなった。

 それでは、日本側に13%という分配比率は絶対に変更できないのかというと、一概にそうとも言い切れない

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