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球団を買収する側の論理に、「文化的公共財」の思想はあるか? 

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 球団買収もいわゆる「M&A」である。しかも、買収額が100億円程度の規模だから、一般的な尺度からするとニュースの対象になりえない。しかし、球団の後ろに控えるステーク・ホルダー(最も顕著なグループが無数のファン)の存在は無視できないし、メディアを通じての社会的影響力も極めて大きいので、球団の売却・買収交渉が公になると、途端に世間が注目することになる。

拡大横浜ベイスターズのファンクラブ募集の看板=横浜市中区の地下鉄関内駅で

 球団業務の大半は一般企業と同じであるが、「商品」の生産プロセスとその性質が他とは根本的に異なる。商品である「試合」は1社(チーム)では生産できない。必ず、2チームが協力しなければ作れない。そのため、球団買収の際にもこの特徴を考慮することが必要となる。つまり売却先との相対交渉だけで買収は終わらないのだ。売却先との合意成立の後、必ず球界参入について他球団の了解取得が必要となる。リーグ内の協調が不可欠だから、自己主張を貫くだけの買収劇はありえない。

 もう一つ重要なことがある。野球協約は、新規参入球団に25億円の預託を定めている。預ける期間は10年。このことは、球界関係者が新規参入のオーナー企業に10年またはそれ以上の球団保有を期待している証になる。長期保有が前提になるから、球団経営は「貸借対照表」的発想、即ち長期的視点に立った資産価値向上を柱にしなければならない。逆に言うと、「費用対効果」を追い求める「損益計算書」的発想は球団経営に相応しくないのだ。

 球団は、社会的知名度は高いが、金儲けは難しいというのが一般的常識だ。このことを端的に示しているのが1954年に国税庁が出した通達だ。球団が利益を出す可能性が低いために、親会社が球団の赤字を広告宣伝費として損金扱いすることを認めたもので、60年近く経った今でも有効である。従って、赤字が当たり前の球団買収は経済常識から逸脱しているとも言える。現に、

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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