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監督の理想は実力51%、人気49%

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

落合監督は名監督である。監督はいわば、能力職だと思う。選手のため、あるいは自分のために勝つ。でもプロ野球が興行である以上、人気もなければ、即ち客が集まらなければ、職をやめざるを得ないのである。

 なぜ、人気がないのか。メディアへのリップサービスがない。試合後の言葉は概して淡泊である。ひと昔前のプロ野球監督のごとく、特定の記者だけと話をし、その他大勢のメディアに対しては、自分の真意をわかってもらおうとしない。選手とほとんど私的な付き合いをしないそうだが、ならばメディアとも公平に接したほうがよかった。

 もちろん、メディアにも失礼な輩はいる。ごう慢な輩もいる。が人間だもの。コミュニケーションをもっと密にとっていれば、メディアは落合監督に好感をいだき、言葉の真意をくみとり、ファンにも理解してもらおうとつとめたはずだ。

 ひと言でいえば、「オレ流」の落合監督は「職人」なのだろう。打撃の、野球の職人である。勝つため、いろんなことを考え、策を施す。でもシャイな性格もあってか、あとでメディアにイチイチ説明しない。多くを語らない。説明しても、どうせ周りには分からないとどこかで思っている。

 もしも「あのさい配の裏にはこんな考えがあったのか」とメディアが気づけば、それはおそらく、ファンに伝わることになる。ファンも感心する。人気が出る。客が集まる。

 たとえば、2007年の日本シリーズ第5戦の9回。完全試合ペースの山井大介投手を交代させた。どんな計算があったのか。

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