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エイベックスとJYJの泥沼裁判(上)

小野登志郎 ノンフィクションライター

韓国のグループ「東方神起」を脱退した「JYJ」の日本での活動は、今現在も困難な状況が続いている。そんな中、JYJがマネジメントを委託する「C-JeSエンタテインメント」と、エイベックス・マネジメントの裁判において、ある「変調」の兆しが垣間見られた。

 下記は、東京地裁でのC-JeSエンタテインメントとエイベックス・マネジメントの裁判記録(民事第29部、平成23年(ワ)第17612号、原告:株式会社C-JeSエンターテインメント、被告:エイベックス・マネジメント株式会社の裁判資料 平成23年10月19日の株式会社C-JeSエンターテインメントによる準備書面)。

 ちなみに、ここで言う「原告代理人」とは、東京地方裁判所での裁判を担当しているC-JeS(シージェス)側の弁護士のことを指す。

 「平成23年9月22日、韓国におけるJYJの代理人である申智慧(シン・ジヘ)弁護士から、原告代理人らに対して、「S.M.(エンターテインメント。韓国の芸能事務所・筆者注)から代理人に対して、日本で行われている裁判を含めて和解したいとの申し入れがあったが、S.M.がこのような申し入れをしてきた真意が分かりにくい。」との問い合わせがあった。これは、韓国において、所属事務所とアーティストとの専属契約の効力に関する訴訟について、近時、長期にわたる専属契約は無効であるとの最高裁の判断が出されたことから、S.M.としては、S.M.とJYJとの訴訟(控訴審)においても、JYJに有利な判決が下される可能性が高まってきたことから、韓国と日本での裁判を和解という形で一挙に解決したいと考えたのではないかと推認される。そして、S.M.が申代理人に対して、上記申し入れをしたということは、被告も、S.M.の指示に従うことを前提としており、被告が原告による日本でのJYJマネジメントを妨害している理由がS.M.の意向を慮ってのことであることが優に推認できる」

 上記には、韓国におけるSMとJYJの裁判について、SMが「和解」を持ちかけてきたことが明記されている。また、エイベックスとシージェスの裁判についても言及しているとある。もちろんこれは、裁判上の和解の提案であって、それ以上でもそれ以下でもない。

 これはいったい、どういうことなのだろうか? 日本のC-JeS側弁護人は言う。

 「c-JeS代表者(ペク・チャンジュ)の了解がないと何も話せない。ただ一般論を言えば、弁護士は事実関係を確認せずに記載したりはしない。和解内容についてもペク氏の了解がないと言えない。ただペク氏の了解を取るのはかなり難しいと思う。個人的には、この件(SM側との和解)は裁判(C-JeSとエイベックスの裁判)にとって有利になるとは思わない。和解より判決が早くほしい」

 和解と判決の違いだが、判決は公表されるが、和解ならば付帯条項に「和解内容を外部に公開しない」が盛り込まれる可能性がある。そうなると、日本の裁判の影響は未知数となり、また、ファンや世間に対する宣伝効果が弱まることが予測される。日本の「C-Jes」側弁護人の「和解よりも判決が欲しい」とは、そういう意味と取れなくもない。

 一方のエイベックス・グループ・ホールディングス(株)のコーポレート広報課担当、柳原氏の返答はそっけない。

 「『S.M.から代理人に対して、日本で行われている裁判を含めて和解したいとの申し入れがあったという事実があるか否か』という件については、当社が回答する立場にはございません。また『貴社にてそのような事実をお聞きになっているか否か』という件ですが、当社は聞いておりません。なお、正式回答については、法定の場において書面にて陳述させていただきます。また、引用部分『平成23年9月22日、韓国における(中略)優に推認できる。』の掲載につきましては、C-Jesエンタテインメントの準備書面ですので、C-Jesエンタテインメントへお問い合わせください」

 C-JeS側弁護人は言う。

 「(準備書面中にある)『専属契約を無効とする最高裁判決が韓国で出た件』とは、JYJのことではなく、2011年中の韓国の別グループの案件だ(スーパージュニアのハンギョンの件・筆者注)。『和解』については、韓国では『調停』となっているが、日韓で言葉が違うのでこれは『和解』のことだと思う。今、(韓国の裁判では)和解に入っている。(JYJの代理人である)シン・ジヘ氏が『和解』という言葉を使ったかどうかについては、ペク氏の了解がないので言えない」

 JYJの3人が所属していた韓国の芸能事務所SMエンターテインメントの日本法人「SMEJ」にもこの件について問い合わせたが、回答はなかった。また、韓国で進行中のSMエンタテインメントとJYJの裁判は非公開となっている為、一切の情報が無い。しかし、ここ日本の裁判での準備書面から窺われるのは、JYJを巡る日韓の芸能事務所との「泥沼」裁判に、何らかの動きがあったこととが推測される。

 ■JYJの契約問題

 そもそも、このエイベックスとC=JeSの裁判を考えるには、韓国と韓国での裁判について、いくつか相当面倒な「おさらい」をしなければならない。

 2010年12月14日、JYJの1人ジュンスは、自身が出演するミュージカル、「天国の涙」の契約書を公開した。ここに書かれていた契約者がC−JeSエンタテインメントだったことで、「これは二重契約」ではないかと一部ファンの間で話題になった。要するに、SMエンターテインメントと専属契約を結んでいるのに、C−JeSとも専属契約を結んでいるのではないかということだ。

 そもそも、専属契約とは何なのだろうか。弁護士の篠原一廣氏は、こう説明する。

 「通常、芸能人がプロダクションと専属契約を締結した場合、芸能活動については、全てプロダクションを通さなければならないこととなります」

 もし「専属」でなかったら、どのように違ってくるのだろうか。

 「専属契約でないのであれば、タレント自身がプロダクションを介さずに自由に仕事ができることになりますので、その効力は全く異なります。このようにしてしまうと、プロダクションの存在が希薄になってしまうため、芸能人がプロダクションと契約する場合には、全て専属契約になっていると思います」(篠原氏)

 言うまでもないが、もしC−JeSがジュンスと専属契約を結んでおり、それが法的に正当性を持っているのなら、ミュージカルの契約書における契約者がC−JeSだったとしても何ら問題はない。ただ、JYJの三人は、専属契約は無効だとしてSMを提訴しているが、仮処分決定は出ているものの、その判決はまだ出ていない。そのため、「SMとの専属契約が残っているのに、別の会社(C−JeS)と専属契約を結んだとしたら二重契約ではないか」という問題が持ち上がってきたのである。

 とはいえ、2009年10月27日のソウル地方中央法院による仮処分決定では、SMに対し、「本案の判決時まで申請人たち(=JYJ)の意思に反する芸能活動に関する第三者との契約交渉、締結行為を禁止し、市場支配力を利用して申請人たちの独自の芸能活動を妨害する行為を禁止」する決定が出されている。

 この「独自の芸能活動」だが、決定文の主文には「放送局・レコード会社・公演企画社など第三者に被申請人(=SMエンターテインメント)が関与していない申請人(=JYJ)たちの芸能活動に関して異議を提起したり、申請人たちとの関係中断を要求するなどで申請人たちの芸能活動を妨害してはならない」とあり、JYJの3人、ジェジュン、ジュンス、ユチョンとSMは専属契約を結んでいる状態ではあるが、例外的な処置を認めるということになっているわけだ。

 そんな中、SMはソウル地方中央法院に、C−JeSとJYJの契約は違法であり、契約の解除を求めるとする訴えを起こした。

 ところが、2011年2月15日、ソウル地方中央法院は、この訴えを棄却。その際の決定文によれば、「被申請人キムジェジュン、パクユチョン、キムジュンスと被申請人株式会社シージェスエンターテインメント間、必要によって一回性で芸能活動に対する業務処理を委託する契約が締結した事実が疏明される」ものの、

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筆者

小野登志郎

小野登志郎(おの・としろう) ノンフィクションライター

1976年、福岡県生まれ。早大中退後、フリーのライターとして執筆活動を始める。在日中国人や暴力団、犯罪などについて取材し、月刊誌や週刊誌に記事を掲載している。著書に『龍宮城 歌舞伎町マフィア最新ファイル』『ドリーム・キャンパス』『アウトロー刑事の人に言えないテクニック』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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