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巨人の「反乱」がサラリーマンに与えた教訓とは?

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 読売ジャイアンツ(巨人)の清武英利球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM)が記者会見を行い、読売新聞グループ本社会長兼主筆及び巨人会長の渡辺恒雄氏のコーチングスタッフへの人事介入に抗議・批判した。

 プロスポーツリーグの組織論をもとに、渡辺氏と清武氏の立場を検証し、その上で、清武GMの主張が正しいか否かについて考える。

拡大「告発」の会見を終え、席を立つ巨人の清武英利代表=11月11日日、文部科学相

 米国メジャーリーグ(MLB)や日本プロ野球機構(NPB)の球団組織では、オーナーが頂点に位置する。その下に彼を実務で支える社長がいて、社長の下部組織として、Baseball Operation(野球運営)とBusiness Operation(営業)、及び財務・経理・総務・人事などの一般的管理部門が存在する。

 今回の巨人の騒動は野球運営部門での出来事である。この部門の指揮系統は、オーナー-社長-GM-監督-選手の順になり、各々の役割と権限を巨人に当てはめてみると以下になる。

オーナー:肩書上は桃井恒和氏がオーナー兼社長だが、実質上、親会社の会長であり球団会長である渡辺氏がオーナーであると見るのが妥当。球団人事や予算を含め、決裁の最終権限は渡辺氏が保持すると解釈できる。

社長:渡辺氏が実質上のオーナーとみると、桃井氏の役割は「社長」として、実務執行を担う立場にある。オーナーに最も近い位置にいるので、オーナーとGMの間の「ブリッジ」の役割をこなして、球団内の意思の疎通を計らなければならない。

GM:清武氏がオーナーと社長から与えられた予算の範囲内で、監督とスタッフ、そして最も重要な選手を揃える責任を負う。

監督:原辰徳氏が、GMが揃えた選手を駆使してペナントレースを戦う。優勝争いに加わることが最低限の義務である。

 上記の関係が支障なく維持されれば、もしチームが優勝できなかった時に、その原因が(1)オーナーからGMに渡された予算が少なかった、(2)GMが揃えた監督と選手が年俸に見合う働きをしなかった、(3)監督の采配が下手だった、のかどうか、責任の所在が明確になるので、次年度の戦力補強に役立てることができる。

 また、球団経営では次のことも考慮する必要がある。NPBの野球規約は、各球団の支配下選手を70名以内と規定している。選手たちは毎年、歳をとり、平均して入団から10年後に現役を引退する。即ち、各球団に毎年6~8名の新人選手が入団し、ほぼ同数が去って行く。だから、主力となる選手のスムーズな新陳代謝がなければ、今現在は強力な戦力であっても、長期にわたってその戦力を維持することができない。

 更に、もう一つの要素が加わる。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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