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史上最強日本人テニス選手の読み取り方

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

世界の男子プロテニスツアーは、今週で男子の最終戦(上位8人のみ出場)と国別団体戦デビスカップの決勝(スペイン対アルゼンチン)を残して、今シーズンのすべての日程を終えようとしている。

 この男子テニスにおいて、日本ナンバー1の地位をゆるぎないものにしてすでに3年以上がたつのが、錦織圭(にしこりけい)選手である。この錦織が、東京での試合こそ世界5位(フェレール)に完敗したが、続く上海の試合で世界8位(ツォンガ)を破り(世界3位のマレーに敗退)、スイス・バーゼルでの試合では世界7位(ベルディヒ)、そして世界1位(ジョコビッチ)を立て続けに破って決勝進出、世界4位(フェデラー)には敗れたが、世界ランキングを日本人史上最高の24位(松岡修造選手の48位を大幅更新)まで引き上げ、今シーズンの最終ランキングを25位で終了した。

 拙稿「日本男子テニス大快挙!の世界標準的見方」(2011年09月21日)でも記したように、低迷を続けた日本代表チームの世界ベスト16入りに導いてもいる。まもなく22歳になろうとする彼にはキャリアのピークに向けてまだ十分時間が残されており、彼が長らく低迷する男子テニスの希望の星となっていることは間違いない。

 しかしスポーツとくに世界規模のプロスポーツ全体で比べると、「メダル」「世界タイトル」の域に届く選手が多く存在しており、とりわけ来年のロンドンオリンピックに向けて注目される中で、たかだか世界20位台の選手は注目に値しないのかもしれない。実際に、ロンドンオリンピックの会場となる、テニスの聖地ウインブルドンの天然芝コート(スピードボールを打つ選手ほど有利)を、配球センスと頭脳的戦略で勝負しどちらかと言えば守備的なプレースタイルの錦織はあまり得意としておらず、少なくとも「メダル」の有力候補ではないことは確かだ。

 それでも世界規模のスポーツ報道の世界では「メダルかどうか」が重要であり、実際に「次回五輪のメダル有力」という、いわば素人向けの見出しで、上記の世界1位撃破を報じたスポーツ紙もあった。この記者はテニス担当を30年来続けている大ベテランであるが、筆者に向かって以前から「テニスがまったくわからない人の関心をひくためには、五輪とか野球とかに無理やり結び付けて見出しを作っていくしかないんだ。子どもたちの関心もそこからはじまる。仕方がないけどそれがテニス報道記者の役割だ」と述べている。

 これは、比較対象の見方の問題であり、たとえば野球やサッカーを個人の力量において世界規模でランキングしたら、トップ10人や20人の中で数えられる日本の選手が希少であることは明らかだ。実際に世界ランキングのあるゴルフと比較しても、日本人選手が20位台に食い込んできたことは十分に価値がある。一般人の読み取り方は報道機関しだいとも言える。

 世界30位以内を錦織が維持し続けると、五輪以上に選手の重要な目標である4大大会(全豪、全仏、全英、全米)でシード選手となり、より勝ち上がりやすい環境が整う。加えて、プロテニスツアー組織であるATPの定める最高賞金グレードの全トーナメント(年間9トーナメント。日本はゼロ)及び所定のチャリティー活動に参加することが義務付けられる。要するに、

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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