大坪正則(スポーツ経営学)
2011年11月28日
入団を拒否すれば、1年間NPB傘下の球団でプレーできず、来年のドラフト会議を待たざるを得ない。過去には、意中の球団が読売ジャイアンツだった江川卓投手、元木大介内野手、長野久義外野手が他球団への入団を拒否して、後に巨人に入団している。
他球団を拒否して数年後に意中の球団に入る現象は巨人だけに起こっている。特に、菅野選手は、巨人の原辰徳監督のおいにあたるために、巨人のドラフト1位指名が確実であり、仮に他球団との競合指名となって抽選に外れた場合、菅野選手は入団を拒否するだろう、との情報(噂)が流れたこともあった。
そのため、ドラフト会議直前まで巨人の単独指名が有力視されていたが、日ハムも1位指名し、抽選で引き当てた。だから、日ハムがドラフト会議で菅野選手を指名した時、会場がどよめきに包まれ、大きな拍手が起こった。続いて、抽選で日ハムが交渉権を得た時は、更に大きな拍手が起こった。拍手は、巨人の菅野選手獲得の手法に他球団が賛意を示していなかった証と言える。
今年のドラフトの目玉だった菅野選手の球団拒否にもかかわらず、メディアの扱いは小さかった。恐らく、NPBが現在直面している二つの難題、即ち、横浜ベイスターズの東京放送(TBS)からディー・エヌ・エー(DeNA)への譲渡と巨人の内紛にメディアの視線が集中しているためと思える。加えて、菅野選手の入団拒否は選手個人の判断だから、ある一面仕方がないとの判断があるようだ。
だが、リーグ経営の本質論から言うと、新人選手の入団拒否は由々しき問題である。NPBのリーグ経営を脅かす可能性を秘めており、同時にドラフト制度の変革につながりかねない。巨人の内紛の一因は菅野選手の獲得失敗にあると言われているが、NPBにとって入団拒否は巨人の内紛より深刻な出来事である。
メディアの矛先が鈍いのも、他球団が心情的に巨人―菅野のドラフトに臨む姿勢に表立って反対しないのも、「職業選択の自由」があるからだ。確かに、万民に職業選択の自由が保障されている。だが、NPBは12球団をひとくくりの組織として管理し、存在する。NPBはトヨタやパナソニックと同じような組織体であり、12球団はその組織に連なる
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