メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

格差なきJ1で奇跡じゃない柏の初優勝

稲垣康介

稲垣康介 稲垣康介(朝日新聞編集委員)

 どんなデータを使うと、ニュース性が高まるか。読者に「へ~」って驚いてもらえるか。記者なら誰もが知恵を絞るところだ。

 今季のJリーグ1部(J1)は、単純明快だった。J2から復帰した柏レイソルが初優勝。昇格したシーズンの優勝はJリーグ史上初の快挙だった。

 一緒に昇格した甲府と福岡は1シーズンでまたJ2への降格が決まったし、Jリーグが2部制になってから昇格したクラブのうち、3分の1は1シーズンでUターンを強いられている。ネルシーニョ監督はじめ、選手、スタッフの頑張りは称賛に値する。

 でも、個人的には「奇跡」、「ミラクル」という驚きはなかった。ここ数年のJ1を見ていると、昇格組が上位に食い込んでくるのは珍しくなかったからだ。

 海外と比較してみるとわかりやすい。2カ月ほど前、専門誌に書いた記事の一部を引っ張り出してみたい。

 「7季連続でレアル・マドリードかバルセロナがタイトルを分け合っているスペインに限らず、欧州の主要リーグの優勝争いはビッグクラブに絞られる。過去5シーズンの優勝クラブを見てみると、イングランド・プレミアリーグはマンチェスター・ユナイテッドが4回、チェルシー1回、イタリアのセリエAはインテル・ミラノ4回、ACミラン1回だ。

 森本貴幸がいる昇格組のノヴァーラが長友佑都のインテル・ミラノを72年ぶりに破ったり、3季ぶりにスペイン1部に復帰にしたベティスが開幕4連勝して単独首位になったりしても、じきに収まるところに収まる。資金力が違う強者と弱者のヒエラルキーは厳然とある。

 それを考えると、J1の優勝争いは開かれた市場だ。2009年にJ1復帰した広島は4位に食い込み、昨年のセ大阪も3位と健闘した。先日、鬼門だったカシマスタジアムで鹿島を破った柏の勢いを見る限り、史上初の昇格組のJ1優勝は夢物語でも何でもない」

 どうして下克上が起きやすいのか。クラブの資金力にケタ違いの差がない、「格差のない社会」だからだ。Jリーグではロシアの大富豪や中東の王族がオイルマネーでスーパースターを買い漁り、強化を図ることがない。

 2010年度のJクラブの決算を見てみる。選手などに払う人件費(監督、コーチ、下部組織の人件費も含む)を見ると、1位浦和の

・・・ログインして読む
(残り:約806文字/本文:約1734文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

稲垣康介

稲垣康介(いながき・こうすけ) 稲垣康介(朝日新聞編集委員)

朝日新聞編集委員。1968年東京生まれ。92年に入社し、新潟支局、東京、大阪のスポーツ部を経て、2001年からヨーロッパ総局(ロンドン)特派員。サッカー、テニスなどスポーツ全般のほか、IOC、FIFAなど国際統括団体の取材も。04年アテネ五輪は開幕1年前からギリシャに駐在し、準備段階から関わった。サッカーのW杯、夏季、冬季五輪を現地取材。2014年6月、WEBRONZA筆者退任

稲垣康介の記事

もっと見る