稲垣康介
2011年12月06日
今季のJリーグ1部(J1)は、単純明快だった。J2から復帰した柏レイソルが初優勝。昇格したシーズンの優勝はJリーグ史上初の快挙だった。
一緒に昇格した甲府と福岡は1シーズンでまたJ2への降格が決まったし、Jリーグが2部制になってから昇格したクラブのうち、3分の1は1シーズンでUターンを強いられている。ネルシーニョ監督はじめ、選手、スタッフの頑張りは称賛に値する。
でも、個人的には「奇跡」、「ミラクル」という驚きはなかった。ここ数年のJ1を見ていると、昇格組が上位に食い込んでくるのは珍しくなかったからだ。
海外と比較してみるとわかりやすい。2カ月ほど前、専門誌に書いた記事の一部を引っ張り出してみたい。
「7季連続でレアル・マドリードかバルセロナがタイトルを分け合っているスペインに限らず、欧州の主要リーグの優勝争いはビッグクラブに絞られる。過去5シーズンの優勝クラブを見てみると、イングランド・プレミアリーグはマンチェスター・ユナイテッドが4回、チェルシー1回、イタリアのセリエAはインテル・ミラノ4回、ACミラン1回だ。
森本貴幸がいる昇格組のノヴァーラが長友佑都のインテル・ミラノを72年ぶりに破ったり、3季ぶりにスペイン1部に復帰にしたベティスが開幕4連勝して単独首位になったりしても、じきに収まるところに収まる。資金力が違う強者と弱者のヒエラルキーは厳然とある。
それを考えると、J1の優勝争いは開かれた市場だ。2009年にJ1復帰した広島は4位に食い込み、昨年のセ大阪も3位と健闘した。先日、鬼門だったカシマスタジアムで鹿島を破った柏の勢いを見る限り、史上初の昇格組のJ1優勝は夢物語でも何でもない」
どうして下克上が起きやすいのか。クラブの資金力にケタ違いの差がない、「格差のない社会」だからだ。Jリーグではロシアの大富豪や中東の王族がオイルマネーでスーパースターを買い漁り、強化を図ることがない。
2010年度のJクラブの決算を見てみる。選手などに払う人件費(監督、コーチ、下部組織の人件費も含む)を見ると、1位浦和の
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