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レベルアップ求められる伝統の早明戦

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

「これが早明戦」。勝った早稲田の辻高志監督も、敗れた明治の吉田義人監督もほぼ満足そうな顔だった。たしかに選手は全力でプレーしただろう。展開もスリリングだった。逆転に次ぐ逆転で、後半ロスタイムに早稲田が逆転PGを蹴り込んだ。だが両チームともプレーの精度が低く、独自の『型』もよく見えなかった。正直、少し物足りなかった。

 伝統の一戦である。だから、その時代の大学の最高レベルの内容であってほしい。とくに早明には高校のトップクラスが大挙、入学している。ことしのワールドカップ(W杯)と比べるのは酷かもしれないが、プレーの精度もチーム戦術・戦略も「雑」なのである。

 12月4日の早稲田×明治。両チームとも対抗戦優勝の可能性を失っているからか、国立競技場の観客は3万人にとどかなかった。日本代表のW杯での不振のせいもあろうが、試合自体が妙味を失ってはいまいか。

 最後はレフリーの笛で決まった。早稲田がひたむきなタックルを繰り返す。前に出る。明治ボールのスクラムをワンプッシュ、相手ナンバー8が右サイド攻撃を仕掛け、ラックをつくる。さらに3番が左サイドに持ち出そうとした。その時、明治のSH田川明洋がつい、早稲田のタックラーを邪魔するかのようにラックにゆっくり寄っていった。笛が鳴る。「オブストラクション」だった。

 途中交代で入ったばかりとはいえ、このSH田川の意味不明の動きは何なのだろう。ゴール前のピンチなのだ。ひとつひとつの動きには必ず、意味がある。単なるコミュニケーションミスか。反則の笛を吹かれたことには同情するが、この散漫な動きはなかろう。

 今季の明治は組織的なディフェンスを整備して、復活の兆しを見せてきた。でも、

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