大坪正則(スポーツ経営学)
2011年12月22日
イギリスのイングランドで生まれたサッカーは、クラブ間の「自由競争」を経営の根幹に置いている。それは、そうせざるを得ないほどにサッカーが世界中に普及・浸透して、多くの国にプロリーグができ、リーグ戦を制したクラブが大陸代表の戦いを経て世界一を目指す仕組みができあがっているからだ。ここが、モンロー主義が象徴するように土地が広くて人口も多く経済力に富んでいるために国内で自己完結できる米国と大きく異なるところである。
欧州は多種多様な人種が国家を形成して古い歴史を刻んできた。国の数が多いために、1872年にイギリス国内のイングランド(アングロサクソン系)対スコットランド(先住民のケルト人系)による最初の国際試合が行われると、その後、欧州では国と地域による国際試合が定期的に組まれるようになった。
イングランドで最初に生まれたプロリーグはアマチュアの協会から独立せずに協会の傘下に留まった。この仕組みがイングランドから欧州各国に、そして世界に伝播した。ここもアマチュアから完全に独立する米国のプロリーグと全く異なる。
今では、国と地域のサッカー協会の下で、あたかも「フランチャイズ制度」を敷くがごとく国と地域が閉鎖的となり、国際試合の開催は各国協会、大陸の連盟、国際サッカー連盟(FIFA)が取り仕切る仕組みになっている。この仕組みの下でのリーグ戦は世界一になるための通過点に過ぎず、リーグ内で各クラブの戦力を均等にすると他国のクラブに勝つことができない。従って、リーグ内の「戦力均衡」はサッカー界では非現実的なのだ。
だが、自由競争はリーグ内クラブの収入格差を生むばかりか、各国リーグ間の経済格差も作るから厄介だ。例えば、欧州5大国のトップリーグに属する98のクラブの中から収入に応じて上位20をとりあげると、
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