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ダルビッシュ有をめぐる日本ハムの作戦には恐れ入る 

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 2011年のシーズン終了後、ポスティング制度を利用して米国メジャーリーグ(MLB)入りを目指す日本人3選手に対する入札額が出そろった。ここまでの動きを見る限り、北海道日本ハムファイターズの周到な準備と戦略が際立って目立つ結果となった。日本ハムの戦略と次に続くダルビッシュ有選手側の契約交渉に対する思惑について分析・考察する。

拡大レンジャーズと交渉することになったダルビッシュ有

 埼玉西武ライオンズの中島裕之内野手、東京ヤクルトスワローズの青木宣親外野手、日本ハムのダルビッシュ投手の3人がポスティング制度を利用してMLB球団への移籍に挑戦した。移籍の可否は現在行われている契約交渉に委ねられている。現行制度の下では、日本野球機構(NPB)の球団に所属する日本人選手がMLBに移籍を希望する場合、二つの方法がある。

 一つ目は、フリーエージェント(FA)制度。一軍選手として規定在籍年数が9年を超えた選手は海外球団へ移籍できるFAの資格を得られる。そうなれば、MLBの全30球団と条件交渉が可能となる。ただし、MLB球団からNPB球団への移籍補償金は発生しない。

 二つ目は、FA資格に満たない選手が申請するポスティング制度。入札制度なので、選手は入団する球団を選択できない。最高額を提示したMLB球団が選手との30日間の独占交渉権を獲得。その後の選手側代理人との年俸等の条件交渉の結果、双方が合意に達すれば、入札額が選手の所属球団に支払われる。一方、契約不成立の場合、全てが元に戻って、選手は日本に留まることになる。

 本論に入る前に、3選手に関する基礎データ(推定年俸、打率・勝敗)及び入札額を記すことにする。

選手 2009年/2010年/2011年/入札額

中島裕之 2.0億円 .309/2.5憶円 .314/2.8億円 .297/250万ドル(約2億円)

青木宣親 2.6億円 .303/2.8億円 .358/3.3億円 .292/250万ドル(約2億円)

ダルビッシュ有 2.7億円、15勝5敗/3.3憶円、12勝8敗/5.0億円、18勝6敗/5170万ドル(約40億円)

 この3人は早くからMLB入りを口にしていた。特に、中島とダルビッシュは、2010年に具体化の動きがあったが、封印された経緯がある。西武・ヤクルト・日本ハムは当該選手の2011年末のMLB入りが不可避であることを承知していたし、選手たちもその心積もりで2011年のシーズンに臨んだはずだ。結果は興味深い形となって現れた。

 ポスティング制度の下では、ダルビッシュに対する入札額は日本ハムの収入になる。一方、最高額を提示したテキサス・レンジャーズは入札額に加え、ダルビッシュに払う年俸も用意しなければならない。

 入札額と年俸を決める際に参考にするのがダルビッシュの最新の年俸であることは疑う余地がない。日本ハムは2011年の契約更改時、2010年の成績が2009年よりも見劣りしたにもかかわらず、ダルビッシュの年俸を1億7000万円増の5億円にした。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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