前田史郎
2012年01月19日
「大阪を変えれば日本が変わる」と書かれたポスターを背に、橋下徹市長は上機嫌だった。
市長と松井一郎知事の前に座るのは、特別顧問の堺屋太一、上山信一、古賀茂明、原英史の4氏。いずれも中央省庁の元キャリア官僚で、大阪都構想の実現に向けた司令塔の役を担う。
元経企庁長官の堺屋氏は、霞が関の経験をもとに公務員制度の改革をさけび続ける。運輸省(現国交省)出身の上山氏は大阪維新の会の知恵袋的な存在で、新書「大阪維新」の著者。
古賀氏は元経産省幹部で、官僚機構を激しく批判して退官、昨秋の府知事選で維新候補としての出馬打診も受けた。同じく経産省出身の原氏は政策コンサル会社の社長で、維新の会の教育・職員基本条例案の作成にかかわった。
4人は積極的な発言を繰り出した。
「議員立法で法案をつくるなら、我々で専門家を用意しないといけない」(堺屋氏)
「(国から財政的に自立する)不交付団体をめざし、10年で段階を踏んでいく」(上山氏)
「まず目玉事業を示すことができるか」(古賀氏)
会議は、週1回のペースで開くことを確認して閉会した。交通渋滞で約20分遅刻した橋下氏は、「遅れてすみません」を計5回口にする気の使いようだった。
経験ある「脱藩官僚」が大阪都の実現に入れ込むのは、橋下氏という高い支持をもつリーダーがいるからだ。いまの大阪なら中央でできない改革ができる。地方発で国の制度を変え、中央集権体制をひっくり返す。その好機と感じているからにほかならない。
都制度を実現するための地方自治法改正案は、みんなの党が作成、次期国会に提案する。自民も独自の改正案をとりまとめる。
橋下氏はすでに主要政党から協力の意向をとりつけているが、気を緩める気配はない。「候補者を立てる準備はする」と語り、次期衆院選では都構想に否定的な候補を標的に刺客を送る構えを見せる。年明けに明らかにした「維新政治塾」は、その基礎固めだ。
■
だが、外へ向けた発信力、影響力の拡大の一方で、ますます先鋭の度を増しているのが、内なる敵に向かうしつこさである。
12月8日、一通の文書が市の所属長に流された。「民意、選挙、公選首長と公務員、行政と政治についての基本認識の徹底について」と題する総務局長名の文書は、こんな内容で始まる。
「本市職員が取材を受ける機会が多数生じているが、不見識な発言について市民から厳しいご意見を頂戴している。軽率な意見の表明や行動で市民の信頼を損なう事態を招くことがないよう……」
要は市長に逆らうような政治的発言は許さんという戒めだ。
別紙で「市長は職員を指揮監督する権限を法律上有する(地方自治法154条)」という根拠法まで添付した。
発端は、
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