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巨人の時代錯誤を早急に修正しなければならない

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 ポスティングシステム(入札制度)を利用して米国メジャーリーグ(MLB)入りを目指していた北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手がテキサス・レンジャーズと合意に達したとの大々的な報道紙面の片隅に興味深い記事があった。

 読売ジャイアンツがスタッフ会議を開き、その折、2011年11月にオーナーに就任した白石興二郎氏が「2012年を無敵ジャイアンツ時代再来のスタートとなる『再興元年』とし、V2、V3、さらにV10を目指す飛躍の年にしなければならない」などの訓示をしたそうだ。

 スタッフ会議という、社内での来年度目標の確認作業を行う場での身内に対する発言だから、ことさら異議を唱える必要もないが、いまだにそんなことを言っているのか、と落胆せざるを得ない。

拡大高校球児に実技指導をする巨人の小笠原道大選手(右)。地道な取り組みがファン離れを食い止める=1月21日、宮崎市の木の花ドーム

 2011年9月4日付の朝日新聞「GLOBE」でも、当時の桃井恒和巨人オーナーが「プロ野球はクラブビジネス。基本は競争」「勝たなきゃだめというのが球団の宿命」と語っていた。また、巨人の親会社である読売新聞の渡辺恒雄会長も清武英利元巨人GMの渡辺氏批判の記者会見に触れて、「巨人が強ければ観客が戻る」旨の発言をしていた。読売新聞と巨人の首脳の一連の発言から、彼らが「勝つことが観客を増やす最善の策」と思っていることが理解できる。しかし、残念ながら、もはやかかる考えは時代遅れなのだ。

 日本野球機構(NPB)に属する12球団の中で、2011年の最高年俸取得選手はダルビッシュ投手で、5億円だった。その彼を獲得するためにレンジャーズは入札に5170万ドル、年俸に6000万ドル、合計1億1170万ドルを用意した。この6年契約の金額を1年平均に換算すると1862万ドル(約14億4000万円)になる。つまり、レンジャーズが日本ハムよりも年平均で3倍の支出を負担することになる。

 だが、NPBの平均選手年俸が約3900万円なのに対し、MLBのそれは約300万ドル(約2億3000万円)と約6倍の格差が存在することを考慮すると、ダルビッシュの場合、6年間の活躍次第で、契約終了後さらに年俸が上昇する余地は十分に残っている。

 NPBの12球団の中で1人の選手に10億円以上の年俸を払える球団があるだろうか。現状ではあり得ない。10億円の年俸を手中にする選手がいる場合、彼に続く2番手や3番手に6~9億円の年俸を払わないとチーム内に不協和音が生じて全体のバランスが崩れることになりかねないし、当然、12球団にそこまでの支払い能力はない。

 ダルビッシュの例で理解できるように、ほぼ同じルールと同じスタイルのビジネス手法をとるプロ野球でありながら日米の選手年俸に大きな格差が生じている。この格差は2001年にイチロー選手が米国に渡った時に既に存在していた。

 その後、イチロー選手同様にNPBの至宝と言われる、松井秀喜選手や松坂大輔選手がMLBの球団と交わした契約年俸はNPB球団の支払い能力をはるかに超えるものだったし、超一流のダルビッシュ投手も同等以上の待遇で迎え入れられた。

 上記のような状況を顧みると、MLBとの年俸格差が10年以上も前から存在し、その差が毎年拡大しているにもかかわらず、巨人を盟主とするNPB球団が、選手年俸の増大、即ち、球団収入の拡大に対する適切な対応策をとらなかったことが明白に分かる。

 現状の格差が縮まない限り、ダルビッシュ投手の年俸がNPBに所属する若手選手、及び、これから球界に入ってくる高校球児や大学生の大きな目標になるに違いない。そして、NPBで相応の実績を積んだ超一流選手がダルビッシュに続け、と次々にMLBに行ってしまうだろう。そんなNPB球団に野球ファンは魅力を感じるだろうか? このままいくと、ファン離れが起こることを心配する。

 NPBの球団首脳を筆頭に「スポーツ経営」に携わる人たちは、なぜ日米間にかくも大きな年俸格差が生まれたのか、

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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