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「実質グローバルに通用する」ことの魅力

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

日本球界の至宝ともいうべきダルビッシュ選手が、ワールドチャンピオンまであと一息の強豪・テキサスレンジャースに入団した。コンディションさえ整えば、メジャーリーグでも優勝チームのローテーションが務まる実力があるということは、すでに2008年のWBCで証明済みだ。通用するかしないかは、あとは未来のコンディションの予想話だけだ。

 野茂選手以来切り拓かれてきた日本人選手を受け入れるメジャーリーグ側(選手や組織のみならず、メディアや観客も含めて)の素地も十分整っている中、円高や日本人選手の評価の低落傾向もあろうが、活躍すれば相応の待遇が与えられる、という点で、MLBをはじめとするプロスポーツ界が選手を裏切ることはない。ダルビッシュがレンジャースでローテーションの一角を担って10勝以上を挙げること、オールスターゲームに出場すること、地区優勝を果たすこと、までを「通用」の具体的要件だとして、これを満たすならば、実質的なグローバル・ベースボールの舞台であるMLB観戦熱も再開することだろう。

 趣向を変えさせていただき、本稿ではこの「実質グローバル」という観点を論じてみたい。スポーツに限らず、グローバルとはデファクトであり、出場チームが世界中でなくても選手が世界中の最高レベルであればそこがグローバルである。野球とアメリカのように長らく不動の関係もあれば、欧州各国のサッカーリーグのように「最高峰」が時代とともに変動する場合もある。サッカーのように、男女で最高峰の大会が違う場合もある。

 折しも、今年はオリンピックイヤーである。メダルを狙えるか否かの議論は、完全なグローバルで3位以内かどうかというハードルの高い話題だ。五輪の金メダルを至上命題としないプロスポーツ分野でも、長友佑都選手、錦織圭選手、小林可夢偉選手、宮里藍選手など、さまざまな日本人が実質的なグローバルでのトッププレイヤーとして現在活躍している。長らく日本国内で完結した市場を築いてきた野球もゴルフも競馬も、実質グローバルスポーツの舞台が日本の外側にあり、日本にやってくる外国人選手よりもハイレベルな競技が存在し、そちらでの活躍のほうが魅力的であり輝かしい、ということが、選手もファンも、わかってしまった時代である。

 プロリーグ発足18年を経た男子サッカーは、はじめから実質グローバルである欧州と南米への移籍と日本国としてのワールドカップ上位進出をキャリアパスとするように設計されている。例外的に日本で完結しているように見える相撲すら、もう5年以上日本人優勝者がおらず、その頂点に君臨する外国人選手の白鵬が日本の伝統文化を完全に体現しているという点で、MLBや欧州サッカーと同様、日本が実質グローバルスポーツの場になっているに過ぎない。

 実質グローバルスポーツにおいて通用するということは、

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