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プロ野球選手の7割が「将来に不安」――セカンドキャリアをどうつくるか

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 日本プロ野球機構(NPB)が2011年10月に宮崎でのフェニックス・リーグに出場した若手選手223人を対象に「セカンドキャリアに関する意識調査」を実施した。223人の平均年齢は23.7歳、平均年俸が約829万円。調査によると、引退後の生活に不安を感じている選手が70%。調査開始から5年連続で70%を超えているそうだ。別の見方をすると、5年の間、若手選手の将来不安を解消するような手立てが行われていないことを調査結果が暗示している。

 子供たちが「夢」に見るプロ野球選手たちが、実際にプロの世界に入り数年経つと「将来に不安」を感じるようでは夢どころの話ではなくなる。この問題に三つの視点からアプローチを試みることにする。

(1)選手会の視点

 選手の将来に取り組むべき組織が選手会(労働組合)であることは論をまたない。セカンドキャリアは引退後の「雇用」確保を意味するので、選手会に組織力と情報力が求められる。しかし、選手会の現状は財力と人力ともに規模が小さく、若手選手の不安に充分な対応ができないでいる。さらに、個々の選手事情が千差万別であることも選手会の介入を拒んでいる。選手の年俸に大きな格差があるために、一律のルールで処理することが難しく、また、選手の周りには後援者なるものも存在するからだ。

 だからといって、手をこまねいていいことにはならない。選手会にとって最も重要なことは、経営者に対する交渉力を高めることだ。選手会は自らの収入を高めることを最優先し、合わせて、経営者に収入増加を促す手立てを講じる必要がある。球団収入が増え、選手への配分額が増加すれば、選手の将来不安は解消する。収入を増やすには、選手会と経営者は運命共同体だという気運を醸成することも大事である。

(2)選手の視点

 毎年、約70名の新人がプロ野球に入ってくる。彼らは極めて狭い門をくぐってきたスポーツ界の超エリートだ。彼らは小さい時から地元では天才とか神童などと呼ばれ、特別の存在だったに違いない。しかし、実際に入団すると、その約1割が1億円プレーヤーになるものの、多くは平均年俸以下で10年を経ずして引退を迫られる。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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