2012年02月24日
デモ参加者だけではなく、「原発やめろデモ」の運営側の人間も回を追うごとに増えていき、気づいた頃には会議の参加者はのべ100人を超えていた。派遣労働者、ニート、学生、主婦、区議会議員、作家、活動家、ミュージシャン、デザイナー、弁護士、編集者、そしてなにより肩書を必要としない多くの人たち。
彼らはそれぞれの個性を発揮し、デモと会議を通じて、“新しい共同体”を生み出していった。その様子を松本はこう語る。
「途中から『素人の乱』のデモじゃなくなったからね。もちろん呼びかけは素人の乱になっているけど、もうまったく別のものだと思ってた。エコの人に右翼や左翼、それに胡散臭い人もいっぱいいたけど(笑)、そのめちゃくちゃな感じが良かった。世の中って、いろんな人たちが声を上げて、ひとつの方向へ行くものだと思っていたから、オレとソリの合わない人もたくさんいたけど、このデモに関しては違うセンスの人であればあるほど嬉しかったよ」
ここで少し松本のこれまでの活動を振り返ってみよう。
彼は法政大学在学中の1996年に「法政の貧乏くささを守る会」を、2001年には「貧乏人大反乱集団」という集団を立ち上げ、既成の学生運動や社会運動をパロディ化した遊び心溢れる運動を展開してきた。
2007年4月には東京都の杉並区議会議員選挙に立候補、“自分たちの町は自分たちで作る=自治”、“町ぐるみで物を捨てない社会=リサイクル”、“金がないヒマ人でも何でもできる社会=文化”といった3本の柱を選挙の公約に、選挙活動の名目の下、1週間毎日、高円寺駅前を“革命後の世界”に変容させた。
彼の、「貧乏人が反乱を起こす」という一貫したコンセプトは、2011年からアメリカで起きている格差是正を求めるOCCUPY WALL STREETの主張とまさにシンクロしている。
とはいえ、2005年に山下と素人の乱を始めてから行った、「オレの自転車を返せデモ!!」や「家賃をタダにしろデモ!」といった荒唐無稽なスローガンのデモと、311以降の「原発やめろデモ」は明らかに趣が違う。
「いままでの素人の乱のデモは“先制攻撃”だったと思うんだよ。問題になっていないことをわざわざ問題にするっていう。例えば、『家賃をタダにしろデモ!』とかさ。“それは誰も問題にしてねーじゃん。いま言うのかよ!?”って(笑)。まだ問題になっていないことに対して、先に文句を言っていくのがうちらのデモだった。先手必勝が大事だと思っていたし、デモは日常行為だったんだよね。でも、今回は起こったことに対応するって意味で緊急行動だと思ってる。そこがいままでのデモと反原発デモの違うところだね」
では、その松本を反原発デモに向かわせた動機はどんなものだったのだろうか。
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