メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ダルビッシュへの資金源は、力を付けた地元放送局

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 米国メジャーリーグ(MLB)のテキサス・レンジャーズが北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手の獲得に総額1億1000万ドル(約89億円)を投じて日本のプロ野球(NPB)関係者を驚かせたが、レンジャーズの強気の補強策の背景が分かってきた。

拡大レンジャーズのホーム球場、レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントン

 レンジャーズは2010年に地元のスポーツ専門テレビ局(Regional Sports Network、RSN)と20年総額30億ドル(約2400億円)の契約を結んでいたのだ。何と、年平均120億円に相当する。この金額だけで、NPB球団の平均年収を超えてしまう。

 レンジャーズの収支構造は以下のようになっている。

●収入 

チケット販売、球場内物品販売、地方テレビ放送権利料、コミッショナーからの配分、全国テレビ放送権利料、マーチャンダイジング、スポンサーシップ

●支出

選手年俸、選手関連経費、球場使用料、事務所経費、役員・職員給料

 放送権利料に関しては、地方市場からの収入に加え、コミッショナーが管轄する全国市場からの収入がある。米国スポーツ専門誌によれば、MLBの現行契約は次のようになっている。

◇テレビ局――年間平均契約額

FOX――2.57億ドル

TNT/TBS――1.00億ドル

ESPN――2.96億ドル

合計――6.53億ドル

 MLBは30球団で構成されるので、1球団当たりの収入は0.27億ドル(約22億円)になる。

 レンジャーズの場合、地元のRSNとの契約料が120億円、全国市場からの放送権利料の配分が22億円。合わせて142億円。おそらく、球団の総収入は200億円をはるかに超えるに違いない。これではNPB球団は太刀打ちできない。

 米国プロリーグの放送権契約は、全国市場をコミッショナーが、そして、地方(地元)市場を各球団が、取り結んでいる。だが、リーグで試合数が異なるために、当然契約内容は違っている。

 例えば、アメフトのNFLは球団の年間主催試合数が8なので、全試合をコミッショナーが管理し、地上波の3局と衛星を利用してケーブル局に番組を配信するESPNの合計4社と契約を結んでいる。この方式では、必ず、地上波の1局が契約から排除される。従って、地上波のテレビ局は生き残りをかけてより高額の放送権利料を提示せざるを得ない。この結果がNFLを世界最高の収入を誇るリーグにしているのだ。

 MLBは球団当たりの年間主催試合が81で、コミッショナーが全試合を管理するわけではない。そこで、全国市場向けの地上波は、FOXとケーブル局向け配信をターナー・グループ(TNT/TBS)及びESPNと契約し、全国放送できない試合は各球団に戻して、各球団が地元の放送局と契約を結ぶ仕組みを取っている。

 MLBの場合、球団と地方局(多くはRSN)との契約が主力になる傾向にある。そのため、大都市をフランチャイズにする球団に大きな額の放送権利料が入り、小都市をフランチャイズとする球団との収入格差が拡がっている。

 同時に、球団オーナーがますます貪欲になって、

・・・ログインして読む
(残り:約1502文字/本文:約2748文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

大坪正則の記事

もっと見る