大久保真紀
2012年03月10日
3月3日午後、さいたま市にある児童自立支援施設の国立武蔵野学院で開かれた研究集会で、黒いスーツに身を包んだ女性(26)が手を挙げて質問をしました。南は九州から北は北海道まで、乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、児童自立支援施設、自立援助ホーム、里親など、子どもたちの社会的養護にかかわる関係者が200人以上集まった場でのことです。
この女性は、親の育児放棄、虐待などで6歳から児童養護施設に入り、12歳から15歳はかつての教護院、児童自立支援施設で生活しました。この日の研究集会の目的は、施設や里親など社会的養護のもとで暮らすすべての子どもに「育ち」「育て」について種別を超えて検討してきたことについて共有するものでした。
昨年は「育てノート」、今年は「育ちアルバム」についての発表がありました。現場でのこの「ノート」と「アルバム」を取り入れていくべきだというものです。
少しわかりづらいですが、「育てノート」はその子どもについて、生まれたときの体重、身長などの事実関係からそのときの様子、そしてその成長ぶりを、エピソードなども交えて記入して、養育者が引き継いでいくというものです。子どもによっては乳児院、施設など施設そのものがいくつにもわたることがありますし、同じ施設の中でも、担当の養育者は変わります。そのため、その子どもの養育の連続性を確保することを目的としています。
学校の宿題で、自分の名前の由来を聞いてくるように、というようなものがあっても、施設で暮らす子どもの場合、職員に聞いてもわからない子どもも少なくありません。そうした空白ができるだけできないようにというものでもあります。「ノート」は養育者が引き継いでいくもので、子どもたちには渡されません。
一方、「育ちアルバム」は子どもに渡すものです。それなりの年齢の子どもなら、職員と一緒に、写真を選びながら、コメントや思い出を書き込み、それを自分の記録としてもっていきます。イベントや頑張ったことや、楽しかったこと、思い出に残ったことを記録していくものです。職員の思いや友だちのコメントなども入れるため、自分が大事にされているという実感を
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