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巨人は「文化的公共財」であるべきだ

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 読売ジャイアンツ(巨人)のファンは野球ファン全体の約20%。彼らは3月15日の朝日新聞の記事をどのような思いで受け止めただろうか。巨人は「勝利至上主義」だから多少の申し合わせ違反は問題ないとするのか、それとも、巨人だけが勝てばよいとの考えには賛成できない、リーグ全体の申し合わせは守るべきとするのか、どちらだろう。

拡大中日とのオープン戦でベンチに並ぶ巨人の阿部慎之助(右)、野間口貴彦(中央)、高橋由伸(左)=2012年3月15日、浜松球場

 問題の本質論から言うと、罰則がないことをよいことにして、巨人が12球団で決めたことを守っていなかったことより、今回の問題発覚を含め、巨人が過去・現在にわたって自己中心的な主張と行為を繰り返し、「球団は文化的公共財」との認識が希薄であることがより深刻と考える。

 そして、今回の出来事を敷衍すると、日本のプロ野球は次の二つを実行に移すべき時期に来ていると思う。

(1)完全ウェーバー制ドラフトの導入

(2)コミッショナー主導による全球団の財務諸表の公開

 上記の2項目は決して難しいことではない。一つめは米国プロリーグでは常識だ。二つめも米国のプロリーグだけではなく、Jリーグを含むサッカーの世界では一般的だ。従って、プロ野球界が躊躇する理由はない。

 私は、3月15日の朝に成田を発ってロンドンに滞在している。16日の午後、ナショナル・ギャラリーに行った。フェルメールをはじめ、誰もが一度は教科書や雑誌・新聞などで目にしたことのある世界的画家、たとえば、ゴッホ、セザンヌ、モネ、マネ、ルノアール、ドガなどが描いた名画を見るためである。もちろん、ナショナル・ギャラリーには1250年代以降の名画が数限りなく展示されている。

 しかも、それらの絵の価値は1点で数億円を超えるものばかり。だが、ある意味、無造作に飾られているので、あらかじめ館内の学芸員に画家の名前を言って展示されている室の番号を聞いてまわらないと、どこにどの絵があるのか皆目分からないし、効率的な見学はできない。

 今回はフェルメールの2点を最優先し、次に印象派の画家を中心に見てまわった。金曜日の午後なのに、世界中からやってきた人々によって館内は混んでいた。入場料はタダ。だが、寄付金を受け付けており、世界の通貨が透明なボックスの中にたくさん入っているのが見える。このことからもナショナル・ギャラリーがロンドンや英国の所有物を超えて世界の「文化的公共財」であることが充分に理解できる。

 世界の人々が毎日見つめるフェルメールやゴッホの絵画は明らかに「文化的公共財」である。それらの絵を直接見ていると、

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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