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沢なきなでしこの進化と可能性

潮智史

潮智史 朝日新聞編集委員

サッカーのなでしこジャパン(日本女子代表チーム)は2月末からのアルガルベカップ(ポルトガル)と4月上旬に米国、ブラジルを国内に迎えたキリンチャレンジカップと二つの国際大会を終えた。それぞれ準優勝、優勝という結果と同時に、プレーの質や試合内容を伴っていたことに、佐々木監督は「個人としてもチームとしても成長している」と成果を口にしている。

 体調不良の沢穂希を代表メンバーから外さざるを得なかったが、終わってみれば、大黒柱の不在や不安材料を感じさせなかった。

 ひとつには、課題だった選手層の薄さを埋める取り組みが前進していることがある。優勝した昨年のW杯までは主力の中でも沢の存在感は際立っていたが、沢に頼っていた若い選手が競争意識を持って先発争いにチャレンジした。

 例えば、沢と同じINAC神戸でプレーする23歳の田中明日菜。W杯で沢が位置したボランチと呼ばれる中央のMFで攻守に好プレーを続けた。阪口とのコンビネーションも良くなり、自信なさげなプレーも減った。田中とポジションを争う23歳の宇津木瑠美も不安定なプレーが少なくなった。

 ロンドン五輪の登録選手枠は18人。どのポジションでもなめらかにこなせる能力が求められ、佐々木監督は24人程度の大枠を固めた中で競争を促している。得意とするポジションしかできないような選手はメンバーに残れない。田中ならボランチ、DFの中央、またはサイドバックと複数の位置で試してきている。ロンドン五輪に生き残るためには、沢不在や沢が戻ってくるかどうかは関係ない。若手の成長にはそんな背景やチーム事情がある。

 そんなポジション争いの渦中にありながら、チームとしてばらばらにならないのは、女子ならではなのだろう。

 金メダルを目標に掲げて、「チームとして五輪に向けて、どこまで成長できるか」という思いをだれもが共有している。アルガルベカップの代表から沢が外れた当初は「沢不在」について触れていた選手たちから、その名前は自然に出てこなくなったし、メディアの側にもいない選手を仮定して質問することがはばかられる空気ができていった。

 当初は危機感に後押しされた部分もあったが、

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筆者

潮智史

潮智史(うしお・さとし) 朝日新聞編集委員

朝日新聞編集委員。1964年生まれ。87年入社。宇都宮支局、運動部、社会部、ヨーロッパ総局(ロンドン駐在)などを経て現職。サッカーを中心にテニス、ゴルフ、体操などを取材。サッカーW杯は米国、フランス、日韓、ドイツ、南アフリカ、ブラジルと6大会続けて現地取材。五輪は00年シドニー、08年北京、12年ロンドンを担当。著書に『指揮官 岡田武史』『日本代表監督論』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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