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プロ野球の「育成」制度はゆがんでいる 

大坪正則(スポーツ経営学)

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 最近の読売ジャイアンツ(巨人)はやはり何か変だ。東海大の菅野智之投手の単独指名狙い、渡邉恒雄会長と清武英利元代表の確執、そして、過去の契約金超過払い報道に対する反応。これら一連の動きはファン離れを起こしてもおかしくない。

 日本のプロ野球(NPB)の盟主と自他ともに認める巨人だが、過去の行動を追ってみると、盟主としてのリーダーシップを時々放棄して、12球団で合意した制度を自分の都合の良いように曲げるのが好きなようだ。巨人は、ドラフトに続いて「育成」制度も本来の趣旨とは異なる方向に進めようとしている。困ったものだ。

 育成制度の現状はどうなっているのか。日本ハムファイターズは育成選手が「ゼロ」に対して、巨人は最多の23名。ソフトバンクホークスが22名を抱えて巨人に続いている。3番目に多いのが広島カープで12名だから、巨人とソフトバンクが突出している。

 趣旨が違うと感じるのは、選手の数だけではない。入団して5~7年目の選手、ひどいところでは13年目や20年目の選手を育成枠に入れている球団もある。これでは、育成ではなく、「囲い込み」ではないだろうか。育成選手が増えると、当然、コーチ陣の数も違ってくる。日本ハムが監督を含め17名に対し、巨人は29名、ソフトバンクは27名と大世帯だ。

 このように「金」が物を言う制度では巨人は必ず中核に位置する。また、選手育成でも、選手補強に対する強気の姿勢で「パの巨人軍」と揶揄されるソフトバンクの面目躍如ぶりが目立つ。

拡大「育成」枠で入団し、一軍で活躍する巨人・山口鉄也投手

 その結果、育成制度でも金満体質の球団とそれ以外との格差が明確になった。誰が考えても、選手の数と戦力は比例する。選手の数が増えると競争がそれ相応に激しくなるからだ。しかも、選手層が厚くなるので、長いペナントレースでは断然有利になる。育成制度の現状は、「戦力の均衡」のみならず、「優勝争い」についても、由々しき問題を含んでいるのだ。

 2005年末に導入が決まった育成制度は、業績不振や工場の海外移転などにより所属していた野球部が廃部や活動停止に陥った社会人野球選手を救う手段の一つとして考案された。広島の活動を下敷きに巨人の清武元代表が骨格を固めて実施に移したと言われている。裾野の広い選手育成環境を維持する目的で開始されたが、始まって6年経った今、上記に述べたごとく、将来に禍根を残すようないびつな形に変化している。

 果たして、現状は12球団の総意(少なくとも、全球団の4分の3以上の賛成)を反映しているのだろうか。私は、12球団の共通認識を見出すことができない。いつものことながら、NPBの各球団は制度実施にあたって、なぜ、足並みが揃わないのだろう。不思議な集団だ。

 NPBのバイブルである野球協約は、「球団は、70名を超える選手を支配下選手にすることはできない」とし、一方で、一軍の試合に出場できる登録選手の数を28名以内と定めている。これは球団間の適正な競争を促すためである。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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