岩田智博(AERA記者)
2012年04月30日
首都直下地震の被害想定が大幅に見直された。
文部科学省の「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」が3月30日に東京都内の最大予測震度を「震度7」に引き上げた結果を踏まえ、都は建物の倒壊や火災などによる死者が約9700人、負傷者が約14万7600人、帰宅困難者が約517万人にのぼると発表した。
確かに、首都機能が一極集中している日本で、首都直下地震が起これば甚大な被害は免れない。早期に対策を打ち、警戒を怠らないことは必須だ。
ただ、この発表通りの「揺れ」や「被害」が出ると捉えることは早計に失する。
最も大きな被害が出る都の想定は、マグニチュード(M)7・3の東京湾北部地震が発生した場合だ。
だが、このM7・3の東京湾北部地震という想定自体、実態に即していない可能性が高い。
東京都が結果を反映させた文科省の特別プロジェクトの発表では、「『東京湾北部地震』は過去に起こったことが確認されていない地震」としている。
その上、M7・3についても特別プロジェクト委員の纐纈(こう・けつ)一起・東大地震研究所教授は「M7・3という想定は仮定で防災政策的見地からの判断。科学的根拠があるわけではない」と明言。
この想定は、起きれば甚大な被害が出る地震を仮定し、防災政策上のマグニチュードをあてはめたものなのだ。「仮定に仮定を重ねた」ものだと言ってもいい。
今回の都の発表では23区で震度7は湾岸地域の一部にあらわれ、震度6強の地点は06年想定の5割から7割に広がった。
とはいえ、首都直下地震が起こったとしても、都の想定通りの「被害」が出るとは限らない。「揺れ」も異なる可能性がある。
たとえば
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください