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既存マスコミとネットの対立が生んだ愛国心

久田将義 TABLO編集長

『ネットと愛国 在特会の闇を追いかけて』(安田浩一著)が献本されて来た。大変楽しみにしていた本なので一気に読了。筆者の安田さんとはジャーナリスト青木理さんと僕のダブル司会で東京・大久保にある「ネイキッドロフト」において「ネット右翼とは」というテーマでトークイベントを開催した間柄でもある。そして、僕にとっても多少縁のある、「在日特権を許さない市民の会」(以下在特会)について書かれているのみならず、最新の「ネット右翼」のルポだからなおさらだった。トークイベントの際の安田さんは「g2」で在特会のルポを発表したばかりであり記事の冷静なスタンスに感銘を受けた。その人の取材の集大成なので注目するのも当然だろう。

 僕が在特会に興味を持ったのは二年くらい前だろうか。当時、自身は「月刊実話ナックルズ」の編集長を務めていてこの会についてはライターから聞いた。不勉強な僕は初め「何それ?」という薄い反応で記事にするまでもないと判断していた。しかし、知り合いの民族派団体から同じような事を聞かれた時、ようやく在特会を少し調べてみようと思い、ホームページやユーチューブで映像を確認してみた。

 その時の嫌悪感。僕が見たのは「ネットと愛国」にも出てくる京都の小学校の前で口汚く罵る様子、セミナーで一人の元老日本兵の「アジア全体で仲良くしなければならない」という発言した途端よってたかって詰め寄るシーン等など。これらを観て僕は憤りにかられた。

 主張はともかく老人に集団でくってかかる事や小学生を怯えさせる事が日本の為になるのか。

 そこで在日三世ライターの李策に一水会木村代表と大日本朱光会阿形会長のインタビュー記事を書いてもらった。2人とも当時は「我々とは全く異なる団体。右翼ではない」という見解だったと記憶している。

 僕は第二弾を考え、桜井誠会長の素性を洗ってみる事にした。これは以前在籍していた「月刊選択」のやり方を踏襲したもので、すなわち「企業記事を書く事、それはトップ(経営者)を書く事に他ならない」。そのトップの桜井会長の生い立ちを知る事によってこの会の何かが知るのではと考えた訳だ。色々な関係者にあたり桜井会長の本名、構成員(ネット会員に非ず)の名前を入手した。

 しかしさて、それからどうしたら良いのものか。当時は公安もさほどこの団体に興味を示しておらず、僕も次第に彼らについての興味が薄れ始めていった。そもそもネット右翼って社会的影響があるのか?と。

 しかし――である。記事掲載後、「実話ナックルズ」のブログが段々と「荒らされ」てきたのだ。当初は読者からの「よく書いてくれた」といった意見が多かったのだが、

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