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[9]小さいデモは「大きい」――海外から見た反原発運動(下)

二木信 音楽ライター

 筆者は、前回紹介した彼女たちの取材を通じて重要なことを思い出していた。

 それは、4月10日の「原発やめろデモ」が世界同時行動=グローバル・アクションの一環だったということである。スウォン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、モントリオール、マイアミ、ベルリン、レンヌ、パンツァーノといった各都市、各地域が東京・高円寺の「原発やめろデモ」に呼応するかたちで、反核・反原発のアクションを起こしていた。誰かが音頭を取ったわけではなく、友人の友人、知り合いの知り合いというルートで情報が広まり、いつの間にかグローバル・アクションが実現していたのだ。

 それは、「原発やめろデモ」を呼びかけた人間の誰も予期していなかったことであり、それが自然発生的に起こった現象であるということは特筆されて然るべきだろう。

デモ終了後のアルタ前広場=2011年6月11日、撮影・小原泰広

 また「原発やめろデモ」では、トラックの荷台にサウンドシステムを乗せ音楽を鳴らしながら練り歩くサウンド・デモの形式が採られていたが、4月10日のデモの映像をUstreamやYouTubeで観た台湾の若者が、4月30日に予定されていた反核デモで台湾初のサウンド・デモを行っている。

 必然なのか偶然なのか、いずれにせよこのようなグローバルな連動が世界のあちこちで起きていたのだ。それは、小さなデモが生み出した大きなうねりだった。

 「原発やめろデモ」のウェブサイトを制作、管理している成田圭祐(36歳)は、海外からの反響が大きいことを早くから認識していたという。

 「海外からのサイトへのアクセス数がとても多かった。全体の2割くらいだと思うけれど、これは僕が今まで関わってきたアクションやデモの告知サイトのアクセスログと比べると、異例の多さです」

 『RADIOACTIVISTS』の中でも取材を受けている成田は、新宿でイレギュラー・リズム・アサイラム(IRA)というインフォ・ショップを営んでいる。店内には、アートやアナキズム、世界各地の対抗文化や対抗運動に関連する本からZINE(ミニコミ)、アンダーグラウンドなパンクやヒップホップ、ワールド・ミュージックのCDやTシャツなどが所狭しと陳列され、また、海外からやってくるアクティヴィストやアナキスト、パンクスたちのプラットフォームとしても機能している。

 おそらく海外の社会運動の情報や動向に日本でもっとも近い位置にいるであろう成田は、クラリッサとユリアが語る小さいデモの重要性に呼応するようにこう語る。

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