大坪正則(スポーツ経営学)
2012年05月26日
2011年は東日本大震災があり、誰もが観客動員低下を当然視したが、通常に戻った今年も前年比減だったことから、関係者には戸惑いがあるようだ。このまま観客動員が推移すると2010年から3年連続して年間観客動員数が前年比で減少することになるからだ。
もちろん、今シーズンは開幕から1ヶ月半しか経っていない。今の数字で今年を展望することは早計かも知れない。だが、メディアの中には動員力低下を懸念する声もある。読者の皆さんも今年のプロ野球は「どうなるだろう」と心配されているのではないだろうか。
確かに、NPBを取り巻く経済環境は決して良いとは言えない。
第一は景気低迷。スポーツが産業革命の間に生まれて、経済発展に伴い大きく飛躍したことでも分かるように、「お金と時間」に余裕がなければスポーツを「見る」ことに力が入らない。観客の主流である一般的サラリーマンが、残業が増える一方で年収がさほど増えない現状下では、観客動員の面でマイナスに作用することは避けられない。
第二は若者の野球離れ。私の授業を受ける学生がベストのサンプルとは言い切れないが、彼らの関心が年々NPBから遠ざかっているのは事実だ。欧州のサッカーの授業に比べるとNPBと同列の米国系プロリーグの受講履修生の数は圧倒的に少ない。彼らの興味はサッカーの選手にある。特に、海外の超一流選手と欧州リーグで活躍する日本人。その分、野球に対する興味が薄れているのだろう。
第三は「華」となる選手の不在。イチロー、松井秀喜、松坂大輔、ダルビッシュ有など「華」となる選手が米国に渡り、誰もが注目する選手がいなくなった。ごくふつうのファンが、各チームのエース投手と四番打者を何人言えるだろうか。なかなか思い出せないのではないだろうか。これが現実と思えば、観客動員力の低下も納得できる。
第四は読売ジャイアンツ(巨人)の人事的混乱。NPBの盟主と自他ともに認める巨人が引き起こす混乱は、決してNPB全体の利益になっていない。最近の学生は潔癖症が多いのかも知れないが、彼らは巨人が起こすような騒動を胡散臭いとして好まない。ファンが心地良いと感じる環境が醸成されていないようだ。
とはいえ、悲観的材料ばかりではない。
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