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居眠り事故を技術的に防ぐ未来図

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

群馬県の関越自動車道で4月29日に7人が死亡した高速バスツアー事故の原因は、被害者関係者には申し訳ないが、運転手の氏素性や国籍とは関係なく、いつか誰かが起こす構造的な問題の一事例であったと言わざるを得ない。「メディア・社会」アリーナでは事件の人間模様を追ったり、運送業界の過酷な労働状況を追ったりすべきかもしれないが、本稿は趣を変えて、技術的な改善の可能性がないわけではないことを紹介する。

 バス・トラック・タクシーの運転手が直面する低賃金労働と、それを補うための過酷な労働時間によって、安全性が明らかに損なわれている状況は久しい。とくにバス停単位で厳格な許認可の下で国庫補助の対象ともなる路線バスと違って、観光バスは同一目的での市場競合が起き、現代日本において付加価値で差のつけられないサービスの価格破壊は必然となる。

 監督官庁である国交省がどんな安全基準を設けたところで今回のような脱法行為が出てくるだけで、許認可を取り消しても倒産しても、消費者が無邪気に格安を喜んでいる限り、次の「格安ツアー手配による、○○社名義貸し、個人経営運転手のバス大事故」が起きるだけだ。運転手の個人的資質のばらつきによって、危険と隣り合わせのサービスが提供され続けるだけ、としか言いようがない。実際には、規制が強化され、価格低下がある程度止まるのだろうが、運転手のワーキング・プアの状態は何も変わらないだろう。

 技術的に多少とも防ぐ方法はないだろうか。鉄道やジェット機のように、専用軌道に入った乗り物が自動操縦され、多少の居眠りでも事故を起こさないような自動制御・自動停止の機能を

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