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派遣村でのパーソナルサポートの経験から

樫村愛子

樫村愛子 愛知大学教授(社会学)

 私は学生たちとの社会調査実習で2010年にホームレス調査を行ったことがある。代々木公園在住のホームレス女性の人たちにお話をうかがい、また豊橋(愛知県)のホームレス支援団体豊橋サマリヤ会の炊き出しや聖書の勉強会でも何人かのホームレスの人たちとお話をした。2010年の秋に行われた豊橋派遣村では実行委員を務め、学生たちと当日のボランティアを行い、私自身派遣村内で同行支援も行った。

 実際にこれらの経験の中で、彼らが働きたい意思が強く、また坂口恭平さんが指摘するようなたくましい生活力を持つこと(金を稼ぐという点では生活力があると言えないと思われるかもしれないが生き生きとしている)、とはいえ路上での生活はやはり厳しいこと(一番怖いことは実は一般人の攻撃。酔っ払いに傘で突かれたり)、また生活保護を受けることを恥ずかしく思っており、生活保護申請をすれば家族や親類に知られたり迷惑をかけたりするため、申請することを恐れていたことを思い出す。

 私が同行支援した方は、一度生活保護を受けたのに十分な支援が続かずまた路上に住むことになったケースだった。行政の支援にはすでに信頼がなく、もう一度申請する気持ちを持ってもらうためにパーソナルサポートは欠かせなかった。健康についても気にされており、当日ワンストップサービスの中で血圧を測ってもらったり医療相談ができたりしたことにもほっとされていた。炊き出しのお弁当はボランティア団体の人たちの手作りの温かさのこもったおいしいもので、だんだんその方の険しい顔がほころび、申請への気持ちを取り戻して来られた。パーソナルサポートをとりまくそれぞれの支援のネットワークの力を実感した。

 私が大学で関わる困難な学生たちの多くは家族との関係の悪さを抱えている。今回の生活保護騒ぎで、成人した大人については家族が必ずしも強制力のある扶養義務を持たないことさえ知らない人も多いのだが

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