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垣根が低くなる欧州サッカーの「自由競争」と米国プロリーグの「戦力の均衡」

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 2011-12年シーズンの欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグ(UCL)は、守りに徹したチェルシー(イングランド)の初優勝で幕を閉じた。今季、リーグ戦でのチェルシーはさえなかった。リーグ5位に終わり来季のUCLの出場権を失っていた。だから今季のUCLにかけたのだろう。優勝クラブの特別枠で来季のUCL出場権を獲得し、一気に蘇った。

 ところで、欧州サッカークラブの収入はどうなっているのだろうか。2009-10年シーズンのUEFAに属する欧州5大国(イングランド、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス)トップリーグ98クラブの中から収入の多い順にトップ10を並べると以下となる。

順位/クラブ/チケット収入/放送権利料/コマーシャル収入/合計(単位:100万ユーロ)

1 レアルマドリード/129/159/151/439

2 バルセロナ/98/198/122/398

3 マンチェスター・ユナイテッド/123/128/99/350

4 バイエルン/67/83/173/323

5 アーセナル/114/106/54/274

6 チェルシー/82/105/69/256

7 ACミラン/31/141/64/236

8 リバプール/52/97/76/225

8 インテル/39/138/48/225

10 ユベントス/17/132/56/205

 自由競争が建前の欧州サッカー界は収入格差が拡大傾向にある。上記の数字で分かるように、4位のバイエルンでもレアルマドリードの4分の3の規模。8位タイのリバプールとインテルになると2分の1になってしまう。ちなみに、20位のアストン・ビラの収入は1億900万ユーロだからレアルマドリードの4分の1だ。

 かかる環境だが、5大国の中でも、権利処理に違いが見られるようになった。イングランド、ドイツ、フランスの3国はテレビ放送権を一括管理し、50%を全クラブに均等配分する一方、残りをテレビ中継の頻度に応じて傾斜配分している。残りのイタリアとスペインはリーグの介入がなく、クラブが個別に権利処理をしている。

 ここでは、世界第1位と2位の収入を挙げるクラブを輩出するスペインを取り上げることにする。スペインは過去、クラブの会社化(株式発行)を禁止したので、地元密着のソシオ組織が育った。

 しかし、イタリアを中心に欧州クラブの経済的・経営的規模が大きくなるにしたがって、スペイン地方都市の弱小クラブはソシオ組織では支出を賄いきれなくなった。そのため、スペインはクラブの会社化を容認した。だが、株式会社になったクラブは、得た金をすぐに選手の年俸に使ったため財務の改善につながらず、結局、元の木阿弥と化した。

 ソシオ組織の大きいレアルマドリードとバルセロナの2強を含む数クラブはソシオを維持した。特に、2強のソシオ組織は桁違いに大きく、会員が世界中に散らばっているので、チケット収入のみならず、テレビ、マーチャンダイジング、スポンサーシップの権利(知的財産権)を効率よく現金化して全て自分の懐に入れることができる。

 結果的に、スペインでは自由競争の弊害が極端な形で現出して、権利処理の上手なクラブと下手なクラブの格差が広がる傾向にある。現時点でも、2強の収入合計は残り18クラブの全収入よりも多い。

 収入格差が広がると「球団選手年俸総額:球団戦力=1:1」の経験則が如実に現れる。その典型的な例がUCLである。2004-05年以降の優勝と準優勝のクラブを以下に列記する。 

シーズン 優勝クラブ/準優勝クラブ

2004-05 リバプール/ACミラン

2005-06 バルセロナ/アーセナル

2006-07 ACミラン/リバプール

2007-08 マンチェスター・ユナイテッド/チェルシー

2008-09 バルセロナ/マンチェスター・ユナイテッド

2009-10 インテル/バイエルン

2010-11 バルセロナ/マンチェスター・ユナイテッド

2011-12 チェルシー/バイエルン

 ここ8年間の優勝と準優勝のクラブはトップ10のうち、レアルマドリードとユベントスを除く8クラブが分け合っている。このことは、UCL出場クラブが固定化し、優勝争いも収入上位のクラブの間で行われる傾向になっていることを示す。

 このことが世界中の注目を集めることになり、テレビ放送権の価値を上昇させることになる。今、4年ごとに行われるオリンピックとサッカーのワールドカップを除けば、毎年行われるスポーツイベントの中で、放送権利料では米国アメリカンフットボール(NFL)のスーパーボウルが最高の収入をあげるが、テレビ視聴者の数ではUCLがしのいでいる。

 それでは、戦力の均衡に最も力を注ぐNFLのスーパーボウルの戦績はどうなっているのだろうか。

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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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