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検察の自浄力には期待できない

河合幹雄

河合幹雄 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

 6月27日、小沢一郎衆議院議員の陸山会事件についての捜査報告書に、捏造された事柄が事実として記載された件について、検事を不起訴処分とする最高検の報告書が公表された。処分内容の検討に入る以前に、私が注目するのは、このタイミング設定である。この日は、東京電力を初めとした電力会社の株主総会が予定されていた。同じ日に株主総会を重ねて乗り切る手法は、脱法的手段として批判されてきたが、その同じ日に、検察の処分を公表すれば、新聞での取り扱いも小さくなると見越したと私には見て取れる。最高検みずから、自分たちの報告は正当なものではないと大声で告白してしまったようなものである。もはや、検察庁の自浄力に期待することはきっぱりやめて、外から切ることを本気で考えるよりほかない。

 この事件については、郷原信郎元検事が、ブログ「『社会的孤立』を深める検察~最高検報告書は完全に破綻している」等において、既に詳細な検討を示している。その論旨には完全に同意できる。検察は、小沢を不起訴処分とした理由を説明する役割を果たすかわりに、検察審査会が起訴するように画策した。その手段として田代検事が虚偽の事実を故意に捜査報告書に記入した。そして、田代の上司も、そのような方針を支持していたことは明白である。最高検の報告書は、まともな根拠が、ひとつもなく結論ありきの作文である。残念だが「検察が言うなら、カラスだって白いのだ」レベルの印象を受けた。

 詳細な論点は郷原氏のブログにまかせて、私は、より大きな視点からこの件について論じたい。すなわち、特捜の社会的役割、あるいは存在意義についてである。収賄罪の取締りという側面は、小沢一郎に関しては当たらない。ダム建設に絡む談合問題もあるが、企業からの政治献金が焦点であろう。冷戦期には、資本主義体制を堅持するために企業から保守政党に多額の献金がされることはヨーロッパ西側諸国でも同様で

あった。冷戦が終結すると、政治体制を壊さないかという遠慮の必要がなくなり、多数の政治家が摘発されるとともに、政治資金を政党交付金として税金から手当てするように改革された。日本も、大筋この路線できているとすれば、政治家への不正な献金に対しては厳しく取締る必要があることになる。この理屈が、小沢に対する厳しい処置の正当化根拠であろう。

 ところが、日本にはというよりも、検察に固有の文脈が

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筆者

河合幹雄

河合幹雄(かわい・みきお) 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

1960年、奈良県生まれ。京都大大学院法学研究科で法社会学専攻、博士後期課程認定修了。京都大学法学部助手をへて桐蔭横浜大学へ。法務省矯正局における「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官(特別捜査幹部研修教官)。著書に『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』『日本の殺人』『終身刑の死角』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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