二木信(音楽ライター)
2012年07月27日
6月29日には、主催者発表で15万とも20万とも言われる群衆が首相官邸前を埋め尽くした。私が4月末に初めて足を運んだ頃からは、信じられないような光景が眼前に広がっていた。興奮するなというほうが無理な話である。
社民党党首の福島みずほや共産党委員長の志位和夫、あるいは坂本龍一といった著名人らも参加している。さらに7月20日には、鳩山由紀夫元首相が駆けつけ、同じ党内の元首相が現首相を、街頭行動の演説で批判するというとんでもない事態になっている。まったく驚きである。7月29日には脱原発国会大包囲という超大規模な行動が予定されている。
いま、反原発運動の意味合いそのものが変わろうとしているのではないだろうか。結論から言ってしまうと、反原発運動が反政府運動へと展開し始めているように思うのだ。反政府運動などと言うと、物騒に聞こえるかもしれない。あるいは、反権力的なロマンティシズムに聞こえるだろうか。
なにも「政権を奪取するぞ!」という前時代的な革命の話ではない。ただ、そもそも原発を撤廃しようとする反原発運動は、日本の政治・経済・社会の根幹を大きく揺さぶることであり、体制を根本からひっくり返そうとする大変革を目指すという意味において、好むと好まざるとにかかわらず、本来的に反体制的な要素を含んでしまっている。そうでなければ、政府をはじめ、関係各所があれだけ必死になって再稼動を推し進めたりするだろうか。
状況が決定的に転換したのは、野田首相が6月8日に行った記者会見以降だった。野田首相は、「国民の安全のために」という、誰が聞いても見え透いた嘘にしか思えないような理由から大飯原発の再稼動を決定した。ウソをつくなら、もっと上手いウソをついてくれ、と思ってしまうほどあの会見は酷かった! あの記者会見が人々に火を付けてしまった。
その後、デモや抗議行動の現場では、「野田やめろ!」「民意を無視するな!」というプラカードやシュプレヒコールがより際立つようになったように思う。「再稼動反対!」「原発反対!」といった主張と共に、「野田やめろ!」という怒りと憤りの声の増幅を現場で感じたのは私だけではないだろう。
実際、6月24日には野田首相の地元である船橋で「電車でGO! 野田退治デモ!!! 再稼働はダメなノダ!」、7月1日には新宿で野田首相に退陣を要求する「原発やめろ野田やめろ!!!!!」といった「反政府」デモが立て続けに行なわれている。前者は2000人、後者は7000人(共に主催者発表)が参加している。
たしかにこれらは、局所的で、いまだ特殊な動きに違いない。とはいうものの、
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