メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[15]甲子園に行きたければ飯を食え!――食事トレーニングのど迫力

神田憲行 ノンフィクションライター

 最近の野球部の流行は食事トレーニングだ。身体を大きくして体力を付けるために、たくさんのご飯を食べさせる。全国的には帝京高校の「三合飯」が有名だが、今大会出場校の中にも取り入れている学校がある。

拡大早朝練習後、山盛りのご飯を食べる浦和学院の野球部員たち=2012年7月31日

 浦和学院では、5月と6月に「1日6食トレーニング」が実施される。

「朝食べて、休み時間に食べて、お昼食べて、3時に食べて、夕ご飯食べて、夜食食べます。たまに森士(おさむ)監督自らおにぎり握って食べさせてますよ」(安保隆示部長)

 この期間だけでなく、日常的に「朝は300グラムの白飯を2杯、晩は400グラムを2杯」が課せられる。

 数年前に同校の「晩餐」を取材したが、食べ終えて空になったお茶碗をコーチに見せて確認してもらい、ちゃんと400グラムを正確に計っているのに驚いた。ご飯少なめ、おかずは選手と同じにして私もご相伴にあずかったが、食べている最中にだんだん疲れてきた。とくに主菜クラスが2品あるのが辛い。

拡大浦和学院では、ご飯をおかわりする時には重さをちゃんと量る=2012年7月31日

「あの、コーチの方も毎日生徒と同じメニュー食べているんですか?」

「……正直、辛いです」

 効果は大きく、エースの佐藤拓也投手は入学時に60キロ程度だった体重が、3年生の今は73キロまで増えた。

 山口代表・宇部鴻城は4、5年前から同トレーニングを取り入れている。

「きっかけは長崎の波佐見高校さんと練習試合をしたときです。向こうの選手の身体が大きいので聞くと、『朝と晩に食べさせているから』と伺いました」(尾崎公彦監督)

 以来、寮生には朝と夕は三合飯が課せられるようになった。

「自宅からの通学生は三合飯の弁当を持ってこさせ、監督と一緒に食べさせています」(藤永隆士部長)

 毎春、新入学生が入部したときに開く最初の保護者会では、寮で使用している丼をわざわざ見せて、

「寮生はこれだけ食べています。みなさんのご家庭でもご協力お願いします」

 と藤永部長が説明するというのだから、念が入っている。その甲斐あって、夏の大会初出場をたぐり寄せた。

「食事トレーニングするようになってから、選手がバテなくなりましたね。甲子園には体重計を持ち込んで、ベスト体重を維持するよう気をつけています」(尾崎監督)

 「食トレ」の目的は冒頭に述べたように、身体を大きくする、バテない体力を作ることだが、その背景を伺わせるこんなエピソードを関東の名門高校の監督から聞いた。

 そこの野球部には大変な偏食の選手がいた。寮のご飯も毎日のように残す。監督が激怒した。

「作ってくれた人の身にもなってみろ。これから寮でお前の飯は出さない、自分で作れ!」

 反省を促す措置なのはもちろんだが、翌日、その選手の保護者から段ボール箱一杯の

・・・ログインして読む
(残り:約168文字/本文:約1292文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

神田憲行

神田憲行(かんだ・のりゆき) ノンフィクションライター

1963年、大阪生まれ。ノンフィクション・ライター。夏の甲子園取材は今年で19年連続20回目。著書に『横浜vs.PL学園』(共著、朝日文庫)など。守備の巧いショートと三つ目のストライクを内角高めに持ってくる投手が好き。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです