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[13]有力校が残った優勝戦線と注目選手たち

神田憲行 ノンフィクションライター

 全校出そろったところで、優勝戦線を考えてみる。

 まずは大阪桐蔭。初戦は打線が2本塁打8得点、投手は14奪三振と数字は派手だが、大会前の予想のような「頭ひとつ抜けている」感はない。

 エース藤浪晋太郎はまだ今春の選抜から選手権大会の初戦まで完封がない。打線も中軸は大振りが目立った。併殺打になりそうな打者走者が一塁に全力疾走しないなど、スキもある。

 ここのキーマンは捕手で1番を打つ森友哉選手だろう。初戦は3安打で打線にリズムを作った。とくに左打席から逆方向のレフトオーバーの打球が光る。彼がグラウンドを駆け回る展開にしてしまうと、対戦校は苦しい。彼の存在感をなくすように全力を尽くすべきだ。また2番手で大阪府大会を24イニングと3分の2を投げて与四死球0の沢田啓佑投手のピッチングも早く見てみたい。

光星学院の北條史也

 チーム力としては光星学院(青森)も魅力的だ。3番田村龍弘、4番北條史也を中心によくまとまり、背番号「4」の先発・城間竜兵が完封するなど投手層も厚い。取材していても2季連続決勝進出に奢ることなく、チャレンジャーとしての姿勢を崩していないところに好感が持てる。

 続くグループとしては神村学園(鹿児島)桐光学園(神奈川)を挙げたい。

 神村学園は「影のクリーンアップ」(山本常夫監督)という下位打線が充実。右の柿沢貴裕、左の平藪樹一郎というタイプの違う2枚の投手の継投が当たり、初戦の智弁和歌山を振り切った。「九州のチャンピオン」といわれるだけに、深紅の大優勝旗に挑む資格は十分にある。

 ただ次戦が光星学院(8月18日第1試合)なのが、両校にとって頭が痛いところだろう。「東北の雄」と「九州のチャンピオン」のレベルの高い戦いが期待できる。

 桐光学園はなんといっても、1回戦で22奪三振、2回戦で19奪三振の松井裕樹投手の存在だ。1958年の大会で記録した板東英二(徳島商)の一大会通算奪三振記録83の半分に、2試合で達してしまった。縦に落ちるスライダーは高校生には打てない。まだ2年生だが、私の友人で神奈川の有力校の監督は、

「秋の大会では打つのを諦めて、違うブロックに入る抽選の練習をしている」

 というほどである(笑)。

 彼の左腕なら、大阪桐蔭の打線を抑え込めるのではないか。ただし、愛工大名電(愛知)、滝川二(兵庫)を破った浦添商(沖縄)と3回戦で対戦する(8月19日、第2試合)。決勝まで勝ち進めばあと4試合、不滅と言われた大記録更新への期待がかかるが、2年生投手の体力がどこまで持つか気がかりだ。

龍谷大平安の井澤凌一朗

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